「美しい」。打ち上げを見て、素直にそう思いました。山崎直子さんの乗る、スペースシャトル・ディスカバリーは4月5日午前6時21分に、 無事打ち上げられました。メディア用の撮影スポットは、打ち上げ台から西に4キロほど離れています。打ち上げ前の静けさも印象的です。発射台から夜空に伸 びるライト、撮影場所との間には生き物の気配に満ちた森と時折、魚が跳ねる音がする巨大な水路が横たわります。
Fri
16
Apr
2010
(撮影:山田久プロデューサー)
「美しい」。打ち上げを見て、素直にそう思いました。山崎直子さんの乗る、スペースシャトル・ディスカバリーは4月5日午前6時21分に、 無事打ち上げられました。メディア用の撮影スポットは、打ち上げ台から西に4キロほど離れています。打ち上げ前の静けさも印象的です。発射台から夜空に伸 びるライト、撮影場所との間には生き物の気配に満ちた森と時折、魚が跳ねる音がする巨大な水路が横たわります。
(撮影:山野孝之)
なにより、打ち上げの10分ほど前に、シャトルがドッキングするお相手、ISS・国際宇宙ステーションが真上を高速で横切って行ったのには、素朴に感動しました。「あれに人が乗っているのか」と思いました。
ディスカバリーは順調に任務をこなしていて、山崎さんも、来週19日には家族と再会することになります。ディスカバリーは今年9月16日に再び宇宙へ向かいます。しかし、これがシャトルが飛ぶ最後のチャンスになる予定です。
5月14日、7月29日(いずれも現地時間)のあわせて3回でシャトルを退役させるのが、
オバマ政権とNASAの計画です。
では、その後はどうなるのか?実は、米国の有人ロケット打ち上げは、しばらくお預けになるのです。オバマ大統領は、今年2月、シャトル計画の後を襲うはずだったコンステレーション(星座)計画を予算不足などを理由に中止しました。シャトル後継機になるはずだった、使い捨てのアレスⅠロケット(有人用)とアレスⅤ(貨物用)開発の中止も発表したのです。いっぽうで、ISS・国際宇宙ステーション計画は継続するので米国の宇宙飛行士は、当分はロシアのソユーズに乗って宇宙に通うことになるのです。
フロリダ州のケネディ宇宙センターは、1959年にスタートした、マーキュリー計画以来、半世紀にわたって有人ロケットの打ち上げを続けてきました。シャトルの退役にともない、NASA職員や関連企業のスタッフらあわせて約1万3000人のうち約8000人が失業すると見られています。
さらに、ケネディ宇宙センター周辺では、1万5000人が仕事を失うと予想され、コンステレーション計画中止には批判が巻き起こりました。フロリダ州は、オバマ大統領にとって、大切な大票田です。スイングステイトのひとつで、再選を目指すためには、是非とも固めておきたい場所です。
そこで、オバマ大統領は、2月の計画中止発表から一転、4月15日になって方針を少し変えました。「2030年代中ごろまでに火星軌道に有人宇宙船を送る」と宣言したのです。月よりも遠い宇宙に人を送るための宇宙船の開発と、その宇宙船を打ち上げるための大型ロケットの開発をするとしています。宇宙船オリオンも、ISSにくっつける緊急脱出用の宇宙船として復活しました。ただし、NASAによる有人ロケットの開発は復活させず、民間企業に開発と打ち上げを委託する方針を貫いています。
雇用については、ブッシュ前大統領よりも2500人の宇宙関連の職を確保、周辺への経済効果としては、1万人の雇用増になるとぶち上げたのです。このオバマの“新宇宙政策”のポイントは、有人ロケットの開発・打ち上げをあくまでも民間に委託するという部分だと思います。
シャトルの維持管理と打ち上げは、膨大な費用と人間を必要とします。「有人ロケットのコストをなるべく下げると同時に、地元経済への悪影響もなるべく抑えて選挙に勝ちい」これがオバマ大統領の本音だったのではないでしょうか。
(人通りの少ないタイタスビル市 撮影:山野孝之)
今、スペースシティでは、人口の流出が始まっています。
市内には、閉鎖されたレストランやモーテルが目に付きます。
「FOR SALE」の看板を立てた住宅も多いです。
市内のアストロノーツ(宇宙飛行士)高校でも、
生徒数がここ5年間で30%も減少したそうです。
不況と、有人ロケット計画への継続不安から街を出る人が後を絶たないそうです。
住民も、市のスタッフも「ゴーストタウン化」へ危機感を強めています。
(”宇宙飛行士学校” 撮影:山野孝之)
スペースシティが危機に陥ったのは、これが初めてではありません。アポロ計画が終わった1970年からのおよそ10年間、1度ゴーストタウンになったことがあるのです。当時、海沿いの一等地に建つ木造2階建て住宅が7000ドルで買えたそうです。
半世紀にわたって宇宙開発をリードしてきた米国。
有人ロケットの中断はロシアだけでなく、中国の台頭を許すことになり、
計画中止に対しては議会を中心に強い反対の声があがりました。
アポロで初めて月に着陸した、ニール・アームストロング元船長もオバマ大統領に対し
「コンステレーション計画の中止は米国を3流にする」と直訴しました。
こうした声に押される形で、オバマ大統領も計画の完全中止ではなく、貨物運搬用の大型ロケット開発と、火星への有人探査の方針残す方向に、“チェンジ”しました。
いっぽうで今年1月の世論調査では半数以上の米国人が「今の経済状態で宇宙開発を続けるべきではない」と回答しています。60年代、70年代のように、国民が宇宙開発に熱狂する時代ではないのも事実です。
(“長老”ビルさん)
しかし、スペースシティの“長老”で数十年間にわたって街の栄枯盛衰を見てきた骨董商ビル・バーンバウムさん(83)は、こう断言します。
「有人ロケットも、人々も必ず戻ってくる!」
「時間は少し掛かるかも知れないが心配するな」
果たしてビルさんの予言どおりになるのか・・・・オバマ大統領がいかに失業率を下げて景気回復をアピールし、再選に向けた足がかりを掴めるかどうかに町の運命も懸かっています。
(シャトルの発射10分後の煙 何に見えますか? 撮影:山野孝之)