ESPNが3Dテレビ専用チャンネル廃止

米メディア企業ウォルト・ディズニー傘下のスポーツ専門局「ESPN」が運営する3D(立体)テレビ専門チャンネル「ESPN3D」が今年いっぱいで廃止されることになった。ESPN広報担当者は、「(企業努力を続けたが)米家庭内で普及せず、他モデルの開発に専念することになった」と廃止の経緯を説明している。 

   

ESPN3Dは、米国内における3Dブームのきっかけになったジェームズ・キャメロン監督の3D映画『アバター』が封切られた09年の翌年に設立され、大学フットボール試合やゴルフ、さらにはボクシングなど380件にのぼるイベントを有料チャンネルとして放送してきた。

ESPNは加入者数についていっさいノーコメントの構えだが、30万人を超えることはなかった(米調査会社SNLケーガン)などの推測も出ている。ニールセン社の視聴率調査の対象にもならない悲惨な状況が続いていた。


米テレビ番組の分析などで知られる米広告会社ホライゾン・メディアの調査部門責任者ブラッド・アドゲイト氏は、「ESPNがやっても成功しないのなら、他に誰がやれるだろうか。3Dテレビに対する熱狂は消失してしまったと見るべきだろう」と分析している。SNLケーガン社のアナリストも報告書の見出しを「さようなら3Dテレビ」とつければ、AP通信は「ESPNの決定は3Dテレビにとって大きな痛手」などと報じている。

2000年に次世代テレビの花形などと大きな期待が寄せられた3Dテレビだが、米調査会社IHSスクリーン・ダイジェストによれば、12年の米3Dテレビ保有世帯は全体のわずか8.5%。保有世帯も3D チャンネルに加入していない世帯がほとんどだという。IHSのアナリストは3D不人気の背景について、「消費者が3Dで見たいと思う番組が決定的に不足している」「専用メガネの着用の煩わしさ」「3Dチャンネル加入料が高額なこと」などを挙げている。


なお、3Dテレビの火付け役となった米映画界を見ても、3D映画人気が停滞気味なのが現状だ。『アバター』に匹敵するヒット作が生まれていないほか、12年に封切られた3D映画の数は前年比20%減少している。

 

いずれにしても、ESPNの決定を受け、米業界内に動揺が広がるのは避けられない状況だが、ソニーがディスカバリー・コミュニケーションズとアイマックス社と提携し11年に立ち上げた3Dチャンネル「3ネット」は当面継続される模様だ。米最大の衛星放送ディレクTV3Dチャンネル「n3D」を昨年閉鎖している。

<テレビ朝日アメリカ 北清>