Fox、映画CATV局好調で増収増益

世界のメディア王といわれるルパート・マードック氏が率いる米メディア企業大手21世紀フォックスがこのほど発表した201446月期決算は、傘下の映画部門とケーブル局グループなどの好業績によって売上高は前年同期比16.8%増となる842400万㌦を記録した。純損益は、前年同期の37100万㌦の赤字から99900万㌦の黒字に転換し、市場の予想を上回る増収増益となった。

ニュース専門局「Foxニュース・チャンネル(FNC)」やスポーツ専門「Foxスポーツ・ネットワーク(FSN)」などケーブル局群を束ねる「Cable Network Programming」部門の売上高は、FNCなどの視聴率好調を背景に広告収入が前年同期比12%増加したこと、ペイテレビ事業者(CATV、衛星放送、電話会社)から徴収した配信料収入が好調だったことなどから、前年同期比13%増となる335000万㌦に達した。相変わらず同部門がグループ全体の稼ぎ頭であることを印象づけた。

地上波テレビFoxネットワークや直営局を傘下に置く「Television」部門の売上高は、ペイテレビからの再送信料収入が増収したものの、Foxネットワークのプライムタイム番組が視聴率低調だったため広告収入が前年比11%落ち込んだことが響き、同6%減少となる10300万㌦だった。全部門中、唯一減収を記録した。プライムタイム番組の低調ぶりは、かつて米テレビ界を代表する人気オーディション番組だった『アメリカン・アイドル』の衰退が要因の一つになっている。

一方、絶好調だったのが映画会社を束ねる「Filmed Entertainment」部門。XMen フューチャー&パスト(邦題)が大ヒットしたことが大きく貢献し、売上高は前年同期比38%増となる28億㌦を記録した。X-Menのほか、アニメ作品『Rio 2』、『The Fault in Our Stars(さよなるを待つ二人のために:邦題)』などの成功も寄与した。

衛星放送部門は、「スカイ・イタリア(Sky Italia)」が放送したサッカー・ワールドカップ・ブラジル大会の放映権料などが大きな負担となったものの、「スカイ・ドイツェランド(Sky Deutchland)」が82000軒の新規加入者を獲得したことなどが好業績につながり、売上高は前年同期比16%増となる159000万㌦となった。

Foxは同業企業のタイムワーナーに対し800億㌦規模の買収提案を仕掛けていたが同決算発表前日撤回を発表。業界内には「マードック氏は簡単にはあきらめないだろう」などの声も聞こえるが、マードック氏は、「(撤回)決定は堅い決心によるものだ」と強調した。

<テレビ朝日アメリカ 北清>