テレビ離れを始めた米CATV

10月に入って米CATV(ケーブルテレビ)業界で注目すべき動きが出た。全米5位のCATV事業者「Suddenlink Communications(サドンリンク・コミュニケーションズ)」が米メディア企業大手バイコム傘下のケーブル局の配信を打ち切ったのだ。これらケーブル局には若者に人気の「MTV」や「コメディー・セントラル」、さらには子供向け専門チャンネルの老舗「ニコロデオン」などが含まれる。

両社は101日から執行されるはずだった新配信契約に向け交渉を続けていたが、サドンリンク関係者によれば、バイアコムから50%近くの値上げを突きつけられ、受け入れれば加入料の大幅な値上げを余儀なくされ、ビジネスが成り立たなくなると判断したという。

バイコム側は、サドンリンク側から提案のあった料金で取りあえず向う1年間契約する暫定案を示したが、サドンリンクが拒否したと説明。「長期にわたった両社の関係に背を向け、加入者の意向を無視したものだ」と非難している。

サドンリンクは、バイアコム系のチャンネル群の代わりにすでに21世紀Fox傘下の若者向けケーブル局「FXX」、独立系チャンネル「ホールマーク・チャンネル」などと配信契約を締結した模様。加入者からは賛意が得られるとの見方を示している。

サドンリンクは、アリゾナ州やテキサス州などを中心に加入世帯数120万を抱える中規模のCATV事業者。1億世帯と言われるペイテレビ・サービス(CATV、衛星放送、電話会社)加入者全体の1%に過ぎず、バイアコムは、「ケーブル局ビジネスに深刻なダメージは一切ない」と強気の構えを崩さない。しかし、ウォール街からはサドンリンクの決定が長期的にはバイアコムばかりかCATV全体に少なからぬ影響をもたらす可能性があると警笛を鳴らす声も上がっている。配信料値上げ傾向が止まらないことに悲鳴を上げる小規模のCATV事業者からはこれまで主軸だった番組配信サービスに見切りをつけブロードバンドに軸足を移す動きも出てきているからだ。加入者数が100万弱の小規模なCATVの市場占有率はわずか14%。ただ、ドミノ現象が起こればメディア企業にとって死活問題に発展するのは必至だ。

米調査会社SNLケーガンによれば、米メディア企業がペイテレビから得るケーブル局配信料は今年、350億㌦に達する見込み。バイアコムを見ても、昨年の広告収入がわずか2%増に留まる中、配信料収入は10%の伸びを見せており、放送外収入の重要な柱になってきている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>