ペイテレビ解約傾向が鮮明化

米国では9割近くの人がCATV、衛星放送、電話会社が提供するペイテレビと呼ばれる映像配信サービスに加入してテレビを視聴しているが、解約傾向の顕著化を示す調査結果がこのほど相次いで発表された。いずれも201479月期の結果をまとめたもの。米調査会社「ライクマン・リサーチ・グループ(LRG)」によれば、ペイテレビ上位13社(市場占有率95%)が同期失った加入世帯総数は15万軒。前年同期の25000軒を大幅に上回ったばかりか、第3四半期としては過去最悪の記録となった。

また、ウォール街の著名な調査会社「モフェット・ネイサンソン」は解約数を同期179000軒、前年同期の83000軒の2倍強に達したことを報告している。米国ではペイテレビ解約のことを、ペイテレビとつながるコードをカットするという意味から“コードカッティング”と呼んでいるが、モフェット・ネイサンソン社ではそのコードカッティングが“加速している”と結論付けている。

ペイテレビの中でもコードカッティングが顕著だったのがCATV事業者。主なCATVが失った同期の加入世帯は前年同期の60万世帯を下回ったものの44万世帯を記録した。CATVの中でも解約数が一番多かったのが全米2位のタイムワーナー・ケーブルで、同期の解約数は182000軒だった。

CATVほどのダメージではなかったが衛星放送も4万軒の加入世帯を失った。最大手ディレクTVは前年同期に139000軒の新規加入世帯を獲得したが、今期は4万軒を失った。

一方、電話会社大手ベライゾンやAT&Tが提供するペイテレビ・サービス(IPテレビ)は逆に今期33万軒の新規加入者を獲得したためペイテレビ全体が失った加入者は約15万軒に留まった。

コードカッティングに踏み切る人は広告主が重要視する若者層に多いが、特に年々値上がりを続ける加入料を嫌っている。2012年には月額平均85.32㌦ほどだった加入料は、今年は92.61㌦に値上がっているという。また、インターネット上の番組配信サービス人気が急上昇中。「お客をネットに奪われている」(ケーブルビジョン)という声も多く聞こえる。

ペイテレビは、米テレビ界のエコシステムに必要不可欠な存在として組み込まれているのが現状。ペイテレビ事業者が払う再送信料は2016年までに地上波テレビネットワークにとって広告収入の13%、ローカルテレビ局にとっては20%を占める大事な放送外収入になる見込みだ(米調査会社SNLケーガン)。

<テレビ朝日アメリカ 北清>