ソニー映画公開中止に大きな反響

北朝鮮の金正恩第1書記暗殺をテーマにしたパロディー映画『ザ・インタビュー』の公開を見送ったソニー・ピクチャーズの判断が大きな波紋を投げかけたが、ソニーは23日、同映画をクリスマスに一部の映画館で公開すると発表、当初の決定を覆した。

ソニーは1225日に全米で封切られる予定だった同映画を、「平和の守護神」を名乗るハッカー・グループが、上映する映画館に対しテロ攻撃を加えるとの声明を受け、公開中止に踏み切った。

これを受けオバマ大統領は1219日、ホワイトハウスで開かれた今年最後の記者会見に臨んだ際、「ソニーが抱いた懸念は理解できるが、(公開中止は)間違った判断だった」と極めて強い調子で否定した。「どこかの国の独裁者に検閲されるような社会はアメリカにはない」とも述べ、表現の自由に対する他国の関与を強くはねつけた。米連邦捜査局(FBI)は同日、ソニーに対するサイバー攻撃は北朝鮮の仕業であるとの捜査結果を発表した。

米メディア界からもソニーの判断に疑問符を投げかける声が上がっていた。ニューヨークタイムズは19日付けの社説でこの問題を取り上げ、「ソニーの決定は、ならず者政権や犯罪者たちをつけあがらせることにつながる悪しき前例となるものだ」と強い調子で糾弾。ウォールストリート・ジャーナル紙も社説で取り上げ、「米政府が同映画を買い上げ、無料で世界中に配信すべきだ。北朝鮮をつけあがらせることを防ぐ代価としては安いものだ」と主張。ロサンゼルス・タイムズ紙社説も、「ソニーは採算を度外視し出来るだけ多くの市民が同映画を見れるような手段を考えるべきだ」と、同映画がこのままお蔵入りになるべきでないとの論評を加えていた。

ソニー側は、「我々は屈服したわけではない。映画館が上映しないと決めたため、他に手段がなかった」などと弁明したが、映画館側は、「我々は上映を延期したり、若干の修正を加えたらどうかと提案しただけ。ソニーは公開中止の責任転換を試みている」と応酬していた。

同ハッカー・グループはソニー・ピクチャーズに対する大規模なサイバー攻撃も行い、幹部の電子メールや社員の個人情報などが流出。幹部間のオバマ大統領に対する人種差別的な発言ともとれる会話なども公になり米社会を混乱に陥れていた。

ホワイトハウスは北朝鮮に対し断固たる対抗措置を取る、としているが具体案などは明らかになっていない。

<テレビ朝日アメリカ 北清>