米FCCが「ネットの中立性」ルール採択

米連邦通信委員会(FCC)は226日、インターネット(ブロードバンド通信)を電話通信などと同じく「公共サービス」として分類する画期的な新ルールを採択した。インターネットへのアクセスがすべての利用者に公平に開放(ネットの中立性)されることを狙ったものだ。番組のデジタル配信に積極的に取り組む姿勢を示している米テレビ業界にとっても朗報といえよう。

米国ではインターネットを活用したIT企業が活況を呈しておりブロードバンド・プロバイダー(接続業者)から「ただ乗り」論が沸騰している。Netflix(ネットフリックス)などブロードバンド経由のビデオ配信サービスの人気が急上昇中で、ネット上の交通渋滞を引き起こしているなどの不満も接続業者から噴き出ている。中には、ネットフリックス利用者の回線速度を故意に遅くする業者も現れていた。

新ルールにより、いかなる接続業者も、消費者による合法的なコンテンツへのアクセスを阻止できなくなるほか、特定のコンテンツ・プロバイダーに対し特別料金を課すことも禁止される。ウィーラーFCC委員長は、「(教育や健康に関する情報なども提供する)極めて重要なものになったインターネットへのアクセスを個々の接続業者によるまちまちのルールに委ねるわけにはいかない」などと、新ルールの必要性をアピールした。

ネットフリックスは「消費者にとって勝利の日になった」とするステートメントを発表したほか、市民団体などからは一斉に歓迎の声が上がっている。一方、CATV事業者や電話会社など接続業者からは「ブロードバンドが政府の不必要な規制下に置かれることになる。技術革新の芽を摘むものだ」と反発が上がっており、法廷闘争に持ち込む構えをみせている。

実は、「ネットの中立性」に関する新ルール設定はFCCが過去に何度か試みたことがある。ところが、いずれも「FCCにはネットサービスを規制する権限がない」などと通信大手が連邦地裁に訴え勝訴していた。これを受けて、ウィーラー委員長は一旦、特別料金を支払うネット利用企業にのみ優先的な接続を提供することを認め、一般利用者には自由なアクセスを保障する折衷案を示していたが、ネットの中立性の必要性を強調するオバマ大統領に促される格好でネットを公共サービスに分類する今回の方針に踏み切った。そのため、独立機関であるFCCに圧力をかけたオバマ大統領の越権行為だとする批判も出ている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>