コードカッティング拡大に危機感募る

 “コードカッティング”は、もはや誰もが無視できない現象となった。ニューヨークタイムズ紙が8月下旬、社説で取り上げこう断定した。米国では9割近くの人がCATVや衛星放送事業者、さらには電話会社が提供する映像配信・再送信サービス(ペイテレビ)に加入してテレビを見ているのが現状だが、かねてから解約数が目立つようになり懸念が寄せられていた。しかし、今年46月期に記録されたコードカッティング数が過去最悪となる60万件超となったことから一機に危機感が募ったかたちだ。

 ちなみに、コードカッティングとは、ペイテレビ事業者とつながっているコードをカットするという意味から、解約の代名詞として定着している。

 背景には「見たくもないチャンネルが多すぎるうえ、加入料が値上がり放題で閉口している」と訴える消費者が増大していること。米労働統計局の調べでは、ペイテレビ加入料の全国平均は月額67㌦。過去20年間で倍増、インフレ率の2倍という急上昇ぶりだ。

 また、Netflix(ネットフリックス)やオンライン通販大手アマゾンなどが提供する番組のインターネット配信サービスの隆盛もコードカッティングに拍車をかけている。生番組や新番組などは視聴できないが、月額約8㌦という廉価で自分の見たい番組などが見たいときに見られるとあってペイテレビ・サービスに背を向ける動きが広まっているのだ。

 コードカッティングの拡大は、ペイテレビ事業者だけの問題ではない。ペイテレビなしでは成り立たないケーブル局を抱える米メディア企業も第2四半期の記録的なコードカッティングに少なからぬ影響を受けている。有力ケーブル局の筆頭でスポーツ専門局ESPNの契約世帯数が減少したことが発表されると、親会社のウォルト・ディズニー社の株価は一気に9%も減少した。「既存のテレビビジネス・モデルが限界に近付いてきたのでは」とばかりに、タイムワーナーや21世紀フォックスなど他米メディア企業の8月の株価は軒並み1014%急落した。

 ウォール街からはコードカッティングにまつわる報道は騒ぎすぎ(モフェット・ネイサンソン・リサーチ)という声も聞こえるが、ニューヨークタイムズは米メディア企業に対し、「消費者がテレビ番組を違った形で見たいと考えているのは明白。そうした声に耳を傾けるべきだ」とし、番組ネット配信の積極展開などを呼び掛けている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>