Netflixが既存テレビ視聴を侵食

 米インターネット動画配信サービス最大手「Netflix(ネットフリックス)」が米メディア業界に与える影響が拡大し続けている。米有力調査会社「モフェット・ネイサンソン」がこのほど発表した調査結果によれば、ネットフリックス加入者によるテレビ番組や映画などビデオ・コンテンツの視聴時間は2015年に290億時間に達した。米消費者が地上波テレビネットワークやケーブル局で放送されたテレビ番組を放送当日及び放送後7日間に視聴した時間の約6%(前年比4.4%増)にも相当するものだ。同調査会社では2020年までに14%に達するとみている。視聴時間で見れば、A+EAMCなど中小規模なケーブル局を上回るまでの存在になっているとの指摘もある。

 業界紙「バラエティー」は同調査結果を受けて、「オンラインビデオ視聴の代表格ネットフリックス視聴はがいまのところ米テレビ界に致命的なダメージを与えるまでには至っていないが、従来のテレビ視聴方法に大きな影響を与え始めているのは明白。テレビ業界に、もはや消すことのできない足跡を残している」と解説している。

 そして、日に日に勢力を増している“ネットフリック台風”の影響をもろにうけているのが、地上波テレビ4大ネットワークだ。モフェット・ネイサンソン社の分析では、ネットフリックス加入世帯によるCBSネットワーク番組視聴は非加入世帯に比べ42%も低くなる。他ネットワークも、Foxが同35%ABC32%NBC27%と一様にネットフリックスに視聴者を奪われている現状が浮き彫りになった。ちなみに、ケーブル局の中にはディスカバリー・チャンネルのように逆にネットフリックス加入世帯のおかげで視聴者数が増えるケースもあるようだ。

 いずれにしても、米メディア業界経営陣からはネットフリックスの台頭を「拡大する脅威」と捉える向きが少なくない。CNNTNTなどを含むケーブル局グループやハリウッド・メジャー「ワーナー・ブラザース」などを傘下に置く米メディア企業大手タイムワーナーの最高責任者(CEO)ジェフ・ビューケス氏は、ネット配信サービスへのコンテンツ提供を見直す考えを示している。メディア企業にとってネットフリックスなどオンラインビデオ配信サービスへの番組販売は、海外テレビ局への番組販売などと並んで貴重な放送外収入になりつつあり、ジレンマを抱えることになりそうだ。

 ちなみに、2015年のネットフリックス米国内加入者数は4474万軒。

<テレビ朝日アメリカ 北清>