トニー賞、15年ぶりの高視聴率

 米演劇界最高の栄誉とされる第70回トニー賞の発表と受賞式が612日、ニューヨーク市内のビーコン・シアターで開催された。今年のトニー賞は圧倒的な人気を誇り、ちょっとした社会現象にもなっているヒップ・ホップ・ミュージカル『ハミルトン』の存在のおかげで例年にない関心が寄せられた。受賞式の模様は米地上波テレビCBSネットワークが全国向けに生中継(米東部時間午後81115分)したが、ニールセン社の速報では、全世帯視聴率が6.8%(シェア11%)、平均視聴者数は873万人に達し、過去15年間で最高の視聴率を記録した。同賞中継番組としては最悪の記録となった昨年の5.1%33%も上回る好記録だった。ちなみに、広告主がターゲットにしている重要視聴者層(1849歳)の視聴率は裏番組に北米アイスホッケー・リーグ(NHL)の王座をかけたスタンリー・カップ決勝戦中継番組があったが、1.5%と昨年比67%増の人気を博した。

 ハミルトンは、“米建国の父”の一人、アレキサンダー・ハミルトンが主人公。米国が独立し、憲法が制定された時代に生きたハミルトン氏の財務長官としての活躍ぶりや最後は決闘で死んでしまう生き様を描いたもの。ヒップ・ホップ・ミュージックを駆使するなどユニークな演出とマイノリティー俳優中心の配役などが人気を呼び、目下ブロードウェイで断トツの人気を誇っている。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、チケットは来年1月まで完売。プレミアム席には849㌦の値がつく(6月上旬時点)ほどの爆発的な人気ぶり。

 ハミルトンは、過去最高となる16のノミネート数を記録し注目されたが、結局ミュージカル部門最高の栄誉となる最優秀作品賞をはじめ、主演男優賞など11部門でトニー賞を獲得。おしくもブロードウェイ史上最多記録保持者『プロデューサーズ』(2001年)が獲得した12部門には及ばなかった。

 一方、演劇部門では、『ヒューマンズ』が最優秀作品賞、助演男優賞など4つの賞を受賞した。

 なお、米国では同授賞式の直線にフロリダ州で米史上最悪の乱射事件が発生したが、同番組の冒頭、司会者でコメディアンのジェイムス・ゴードン氏が同事件に触れ、「憎しみが勝利することはない。それを我々みんなで共有し合おう。今晩の授賞式はその原則の確認を象徴するものになる」と宣言、候補者全員が同事件の犠牲者を追悼するシルバー・リボンを胸につけ出演した。

 

<テレビ朝日アメリカ 北清>