ブロードウェイが初の動画ライブ配信

 米演劇界最高の栄誉とされるトニー賞の発表と授賞式が開催され、米建国の父の一人、アレキサンダー・ハミルトンを描いたヒップ・ホップ・ミュージカル『ハミルトン』が主演男優賞を含む11部門でトニー賞を獲得するなど話題を振りまいたばかりのブロードウェイがまた新たな話題を提供している。

 現在、マンハッタンのスタジオ54で公演中の『シー・ラブズ・ミー』が630日、インターネット上で生放送(ライブ・ストリーミング)されることになったのだ。ニューヨークのメトロポリタン・オペラやロンドンのザ・ナショナル・シアターのオペラが映画館などで上映(中継)されることはあるが、ブロードウェイ・ショーが劇場以外で生で観劇することができるのは初めてのこと。米メディア各社は『画期的な出来事』(ニューヨーク・タイムズ紙)などと一斉に報じている。

 

  ブロードウェイの過去のヒット作などのオンデマンド配信などを手掛ける「BroadwayHD」が中継を担当。30日限定で、午後8時からネット上で生放送される。BroadwayHDの会員は無料で視聴できるが、非会員にもペイー・パー・ビュー方式(9.99㌦)で提供される。

 シー・ラブズ・ミーのオーケストラ席は目下200㌦以上の値がついており、劇場の席ではないものの9.99㌦は

破格の値段。「入場客を奪ってしまうのではないか」などの懸念の声も上がっているようだが、ブロードウェイ関係者は、「大ヒットしたブロードウェイ・ショー『シカゴ』が映画化された時にも同様な危惧が寄せられたが、映画が公開されるとブロードウェイ版の入場者数はうなぎ上りになった。今回も(シー・ラブズ・ミーへの)関心がむしろ高まるのではないか」と予想している。

 同ショーは710日に終了の予定だが、ライブ・ストリーミングが成功裏に収り、劇場での入場者数が増えれば、公演が延長される可能性もありそうだ。他のブロードウェイ・ショーから動画配信に取り組む向きが出てくる可能性もある。俳優協会からも「ストリーミング版が活況を呈するようになれば、出演者らにとって新たな収入源の道が開かれることになる」などと期待が寄せられている。

 ちなみに、『シー・ラブズ・ミー』は、1963年に映画化されたこともあるロマンティック・コメディー。98年にはトム・ハンクスとメグ・ライアンが主演したリメイク版『ユー・ガット・メール』が大ヒットしたことでも知られる。

 

<テレビ朝日アメリカ 北清>