米TV新シーズン番組前線に異変


米テレビ界では9月から始まる新シーズンの編成内容やプライムタイムで放送される番組のCM予約販売などが交渉される重大イベント「アップフロント」が5月に迫っている。そのアップフロン前線に変化が起きている。アップフロントで広告主に披露される新番組のパイロット版の内容で見る限り、新シーズンに登場する番組は、不況下の米生活者の心理を鑑み、難解な内容の番組は後退し、分かりやすいエピソードのものが多く登場するという(バラエティー誌)。

制作会社大手ワーナー・ブラザーズ・テレビジョンのピーター・ロス社長は、業界誌TVウィークに新シーズンの傾向について、「暗いムードを吹っ飛ばすようなヒーローが登場する内容のもの、さらには現実逃避が出来る内容の番組が多くなる」と語っている。各ネットワークともコメディー番組を例年以上に多く編成する模様だ。独創的なものや高品質の番組が消え去るわけではないと主張しているが、各社とも制作コストの抑制に極めて敏感になっている。「番組に登場する主人公には有名な俳優を起用するが、脇役には出演料の安価な無名の役者を使う予定」(マット・チャーニスFoxネットワーク編成担当専務)などと、これまでに考えられなかったアイディアも採用されるという。

一方、バラエティー誌によれば、各ネットワークによる番組の調達は、予算削減と相乗効果を狙ってグループ傘下の制作会社を優先する動きが定着しつつあるようだ。

ところで、広告主に披露する新番組のパイロット版の制作者にも「低予算で、しかも高視聴率を連想させるようなパイロット版を作ってほしい」などと難題が突きつけられているという。ハリウッドのある制作者は、「昨年は米脚本家協会(WGA)のストライキで大きなダメージを受けたが、今年は経済不振に打ちのめられそうだ」と悲鳴を上げている。