津波映像に米報道機関も釘付け


東日本大震災は発生直後から米メディアが極めて大きな扱いで報じた。CNNFoxニュース・チャンネル(FNC)などニュース専門局はもとより、各ネットワークテレビも連日、夕方の全国向けニュース番組で大きく報道したが、その裏には、特に大津波の被害を克明に伝えるビデオ映像の存在があったようだ。AP通信のテレビ業界担当記者デイビッド・ボーダー氏はこのほど配信された解説記事の中で、「今回の津波映像は、ビデオ映像に克明に録画された大災害として、2001911日に米国で発生した同時テロ以来のものとなった」と指摘している。

 

ボーダー氏によれば、2004年インドネシアを襲った大津波の模様も録画されているが、撮影された場所が限定されていたほか画質の乏しいものばかりだった。ところが、東日本大震災のものは、津波が発生した直後の模様から、生中継も含め、様々な場所や角度から撮影されたうえ、いずれも高画質なものが多かった。そのため、被害の模様が前例のないほど克明に記録された。そして、「息を呑むほどの劇的な映像」(ボーダー氏)が数多く記録された背景には、日本が、優れたビデオカメラやカメラ内蔵型携帯電話、さらには映像伝送システムが普及している“テクノロジー王国”というユニークな国であるからだとしている。

 

ところで、米市民はもとより、米報道関係者にも前代未聞となった大震災は、各報道番組の視聴率上昇につながったことは言うまでもない。3大ネットワークが全国向けに放送する夕方ニュースの中で、唯一メイン・キャスター(ダイアン・ソイヤー氏)を被災地に送り込んだABCの「ワールド・ニュース」は1年ぶりの高視聴率を獲得。各ネットワークのモーニング・ショー(朝帯番組)も多くの視聴者をひきつけた。米テレビ界のナンバーワン番組となっているNBCの「トゥデー」は一時、視聴者数661万人と20102月の冬季五輪時以来の高視聴率となったほか、ABCの「グッドモーニング・アメリカ」も震災発生直後の番組で599万人と033月以来の高視聴率を獲得した。   

 

CNN視聴率は大幅アップ

最近、視聴率低迷に悩んでいたCNNでは、東日本大震災に続きリビア危機もあって、3月のプライムタイム視聴者数が昨年1012月期比28%も増加。2009年1月のオバマ大統領就任式特番以来の記録となった。このまま行けば、ライバル局MSNBCを抜き、Foxニュース・チャンネルに次ぐ月間第2位の座に返り咲くことになりそうだ。ほぼ1年ぶりの快挙で、「クライシス(危機)報道に強いニュース専門局」を印象付ける結果となった。昨年夏、劣勢挽回を託されてCNN国内担当の責任者に就任したケン・ジョウツ氏は、「CNNに求められているものは、他ニュース専門局との違いを際立たさせることだ」と述べているが、他社が国内政治や党派的な色彩を強調するなかで、同社の豊富な取材力を駆使し、本来のテレビ・ジャーナリズムを強調する報道姿勢を貫く考えを鮮明にしている。CNNによれば、日本に送り込んだ取材班は、看板キャスター、アンダーソン・クーパー氏やサンジェイ・グプタ氏を含み一時、十数クルーに達した模様。AP 通信は、「海外報道に威力を発揮する」CNNの取材班はピーク時に11クルーに達したと報じている。 <NY北清>