台頭するナショナリズム ペルー大統領選(1)

オジャンタ-ウマラ候補-リマ6月2日-撮影-山野孝之
オジャンタ-ウマラ候補-リマ6月2日-撮影-山野孝之

「パトリア(愛国)!」

 

 ケイコ・フジモリ候補とオジャンタ・ウマラ候補の選挙集会は雰囲気が違う。まず、ウマラ候補の集会には男性労働者が多い。何よりも日本メディアに対する態度が違う。集会を取材中、支持者から何度も罵声を浴びた。「チーノはもう要らない!」という内容が多かった。チーノとは、直訳すれば中国人。フジモリ元大統領の愛称だった。だが、今回は明らかに蔑称として使われていた。絡まれてビールをかけられたこともあった。

 

 


 ウマラ候補が代表を務める政党は「ペルー勝利党」。

旧名は「ナショナリスタ党」で、党是は「ペルーの価値を高める」だ。

前回、2006年の選挙で躍進し、今年4月の総選挙でも議会第一党を守った。

ウマラ候補については、左派の元軍人で資源関連企業の国有化を公約に掲げていることに

注目が集まっているが、ナショナリズムも重要な要素だと言える。

 

 大統領選で勝利した大きな原因は、ウマラ候補が貧困層の熱狂的な支持を集めたことにある。

観光地のクスコやチチカカ湖畔のプーノなど、ペルー南部では、ケイコ候補にダブルスコア以上の

大差を付けた。

 

 貧困層の心を捉えたのは、「ガス会社国有化による料金値下げ」という公約だけではない。

「豊かなペルーの資源はペルー人のために」というメッセージに、ウマラ候補は「愛国」という言葉を

巧みに織り交ぜる。 経済発展から取り残され、貧困にあえぐ人々にはまことに気持ちの良い言葉なのだろう。

                     =以下 次号=

 

                     <リマ 山野孝之