米映画業界、3D映画不振に危機感

米映画業界が3D(3次元)映画の不振に危機感を抱いている。5月最後の週末はメモリアル・デー(戦没者追悼記念日)を含む3連休。米国ではこの祝日を皮切りに夏が始まるとされており、映画界が次々に新作を発表する時期でもある。今年もディズニー映画の「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」、パラマウント映画の「カンフー・バンダ2」など話題作が続々と封切られた。しかし、収益率の高い3D版が不調で頭を抱えているのが現状だ。

ニューヨーク・タイムズ紙などによれば、通常ならば話題作は観客数の6割が3D版を選択するが、パイレーツは47%に留まっているという。制作費と宣伝費をあわせ4億㌦を投入したディズニーはショックを隠しきれないが、3D版不調はパイレーツのみだけではない。パラマウント映画の「カンフー・パンダ2」は公開初日に当たる木曜日から日曜日にかけての週末の売上は5380万㌦に達したが、そのうち3D版が占める割合は45%に留まった模様だ。
こんな傾向を受けて、米金融ブローカー・ディーラー大手BTIG社のアナリスト、リチャード・グリーンフィールド氏は、「米消費者は3D映画に背を向けてしまったことの証だ」と解説。ニューヨーク・タイムズ紙も、「3Dブームはもはや過去のものになった可能性がある」と指摘している。3D版の入場料が極めて割高なことと、専用メガネを着用しなければならないわずらわしさも背景にありそうだが、ある専門家は、「より深刻な問題は、中流の作品を3D化し利幅を上げようとする業界の狙いを消費者が見抜いてしまっていることだ」と指摘する。映画映写システム大手IMAX(アイマックス)傘下のImax Filmed Entertainment社のグレッグ・フォスター社長は、「観客は非常に賢い。本物かどうか(作品が綿密に3D製作されたかどうか)鋭い嗅覚で嗅ぎ分けてしまう」と述べている。 しかし、米映画業界に朗報がないわけではない。米国内では不調の3D映画が海外市場では好調な売上を記録しているからだ。パイレーツの海外における興行成績は封切後最初の週末だけで2億5600万㌦と過去最高のものとなったという。  ところで、米国では3Dテレビへの関心もイマイチだが、専用テレビの売れ行きに明るい見通しが出ている。米調査会社「ディスプレー・サーチ」によれば、今年1-3月期の3Dテレビ出荷台数は190万台と昨年同期比104%の伸びを見せた。ただ、3Dテレビの市場占有率は3.9%に留まっているのが現状だ。 <テレビ朝日アメリカ 北清>