米地上波ネットワークテレビが広告主に対し、新シーズン(9月開始)のプライムタイム番組編成発表とCMの予約販売交渉を行う「アップフロント」が6月9日、終了した。ネットワークテレビ5社(ABC、CBS、Fox、NBC、CW)の合計売上高は91~92億㌦に達した模様。ミニ・ネットワークと呼ばれるCWを除く4大ネットワークテレビの売上は昨年比8~10%増を獲得。インターネットを重用する若者や携帯情報端末などの普及でテレビ離れが指摘される中、引き続きテレビが最強媒体であることを印象付けたかたちだ。
ネットワーク別でみると、売上高が一番多かったのがCBS。今シーズンも世帯視聴率王に輝き、「米国で最も見られているネットワーク」を自負するネットワークだが、売上高は26~27億㌦に達した模様だ。次いで多かったのがABCの23~24億㌦。プライムタイム枠が他社より1時間短いFoxは20~21億㌦を獲得。ここ数年スランプが続いているNBCは17億㌦に留まった。
また、各ネットワークはCM料金の費用対効果を表す指標、CPMの値上げも勝ち取った。CBSが昨年比13~15%、ABCとFoxが10~12%などと平均二桁台。最低の上げ幅だったNBCでさえ9%増を獲得した模様だ。
衰退ぶりがささやかれ久しいネットワークテレビが、CM市場で圧倒的な強さ示した背景について専門家の間では、「インターネットなど新たな媒体が注目されているが、消費者への到達率を考えるとテレビの右に出るものなし。テレビに投入される広告費が大量に他媒体に流れる兆しはほとんどないのが現状だ」(米投資会社Davenport&Coのアナリスト、マイケル・モリス氏)などの見方が支配的。しかし、「これほどの活況がいつまでも続くと考えるのは間違いだ」(オンライン金融関係業者)などと、警笛を鳴らす向きもある。
ちなみに、アップフロント売上にはロンドン夏季五輪大会(NBC)、人気スポーツ番組「サタデーナイト・カレッジ・フットボール(大学フットボール・リーグ戦)」(ABC)や「マーチ・マッドネス(大学バスケットボール・プレイーオフ戦)」(CBS)などスポーツ特別番組などの広告売上は含まれていないことに留意。
今年のアップフロントでは各社ともプライムタイム(午後8~11時)で放送されるCM枠の75%~85%が予約販売されたことが報告されているが、残りの15~25%のCM枠については、ネットワーク・サイドがリスク回避のためにシーズン直前やシーズン中まで温存するのが通例だ。
<テレビ朝日アメリカ 北清>