ポストブラジルを狙え! 興隆を続けるペルー経済

リマ周辺では建設ラッシュが続く
リマ周辺では建設ラッシュが続く

2007年、8.91%

2008年、9.80%

2009年、0.86%

2010年、8.80%
これはブラジルや中国の実質経済成長率ではない。

南米ペルーの成長率だ。

リーマンショックをもろともせず、1998年以来、驚異の12年連続のプラス成長を遂げるその姿は、目を見張るものがある。今年は7.50%の成長を見込んでいる。

この安定した経済発展の基礎を築いたのは、アルベルト・フジモリ元ペルー大統領だ。フジモリ氏がセンデロ・ルミノソなどのテロ組織を叩き潰した上で、徹底した国営企業の民営化と市場開放を推進した。その優れた経済政策は、氏を人権問題などで糾弾したトレド元ペルー大統領やガルシア現ペルー大統領にさえも踏襲された。

 

7000%超のスーパーインフレと、強大なテロ組織に怯えていたのは過去の話。21世紀に入り、世界中で巻き起こっている資源争奪戦にペルーは「供給側」として参戦。安定した治安と政治は、続々と海外からの投資を呼び込み、雇用を生んだ。

 

と同時に、政府は増えた税収を公共事業に使った。それは更なる雇用創出と内需を刺激することに成功し、ペルー経済を猛烈に牽引していった。ペルーはアメリカ、韓国、中国などともFTAを締結し、(日本とはEPAを締結、発効)その「攻めの姿勢」を貫くことで更なる成長をもくろんでいる。 貧困層の532世帯が毎日中流階級入りし、新車販売台数が過去最高を記録するなど、ペルーの国民生活は劇的に好転している。週末、家族で郊外にある新築の一戸建てから、日本車で高級ブランドが入るショッピングモールに向かい、クレジットカードで大型液晶テレビを買う。今まで映画やドラマでしか見たことのないこのようなライフスタイルを、ペルー人は謳歌し始めている。

 

高級ブランドが入るリマのショッピングセンター。リマっ子のお目当ては現地で800米ドルほどするiPhone
高級ブランドが入るリマのショッピングセンター。リマっ子のお目当ては現地で800米ドルほどするiPhone

 

しかしながら。光が当たれば当たるほど、またその光が強ければ強いほど、影はさらに大きく、さらに濃くなっていく。「国民総中流」の道から取り残された人たち、特に南部などの地方に住む人の不満、鬱憤、閉塞感はペルーの隠し切れない事実として日に日に大きくなっていった。

 

その政治的嗜好はともかくとして、ペルーの国民がケイコ・フジモリ候補ではなく、オリャンタ・ウマラ候補を次期大統領に選んだのは、彼がより目に見える形での変化を、自分たちの日常生活にもたらしてくれるに違いないという、人々の渇望の現われだったように思う。

次期大統領、オリャンタ・ウマラ氏
次期大統領、オリャンタ・ウマラ氏

富裕層や中流層が納得できる経済成長を持続させながら、いかに経済格差を小さくし、教育などを通じてより平等な機会をペルー国民に与えることができるか。ウマラ氏の政治手腕が、就任前から熱い注目を浴びている。

開票速報を見守るペルーの有権者
開票速報を見守るペルーの有権者
リマ周辺では建設ラッシュが続く
リマ周辺では建設ラッシュが続く