
フォトグラファーの望月瞳さんからの寄稿です。
望月さんは今年3月、ニューヨーク市郊外にあるカラテ道場から
写真撮影の依頼を受けました。道場の紹介カットがメインでしたが
東日本大震災の発生を受けて道場側から
「日本を応援する写真にして欲しい」とリクエスト。
子供達のメッセージを撮影することになりました。
「被災地の人たちに見て欲しい」。
撮影した望月さんの心も揺さぶられたようです。
<NY支局 山野孝之>

現場で感動したのは、こんなに小さい子達が「困ってる人を助けるべき」という意思をしっかり持っている事でした。
私が7、8歳の頃、こんなメッセージを書いた事はなかったし、お恥ずかしい限りですが、そもそも海のむこうの遠い国の出来事を具体的に考えた事もなかった気がします。
N.Y.の良いところは、「弱者を助ける」という思想が定着している事だと思います。 例えば地下鉄の中では女性だけでなく、小さな子供にも席を譲ってあげる。ホームレスに同情すればお金をあげる。(日本では、ホームレスにあっても見てみぬふりですし、子供は厳しくしつけるという文化から、電車で子供に席を譲ることもあまりありませんよね。)
でも「自分が少しでも余裕があれば他人をサポートする」という考えはとても良い考えですよね。心を豊かにします。そういう思想が子供達の中にも根付いているのを見てうれしくなりました。
生徒さんの一人は「毎日学校で日本のためにお祈りしてます」と言っていたそうです。そういう教育をする学校もすばらしいですよね。
この子達の中で一番小さい子は4歳でしたが、今理解できてなくても、見習ってやってるうちに「人を助ける」という意識が心に育って行くと思います。
撮った後、これを見た人がどれぐらいメッセージを感じてくれるだろうか?と思ってました。 N.Y.の人や東京の人達の反応は「いいじゃない」といった程度でした。 そこへ偶然、岩手県の被災地の方にお会いする機会があり、その方に見せるとびっくりするほど感激してくださったんですね。
私は数枚の写真をプリントして、その方に郵送したんですが、「これは多くの人に見てもらいたい、被災者は今あちらこちらに散っているんです、その皆が見れるようメディアに載せるべき」と言ってくださいました。
とてもうれしかったです。メッセージが届いて、勇気づける事ができたのですから。(ポートレイト写真というのは、写真好きじゃない方からすると難解で、有名人が映ってないと理解されなかったりするんですけど、このポートレイトは有名人が映ってるわけではないのに心に響いたわけですから。)
当初の目的は、少しでも人々を元気づけることでしたから、このご家族の感想を聞いてほんとうにうれしく感じました。
<フォトグラファー 望月瞳>
カラテ道場のホームページ http://www.suzukidojo.com/

望月 瞳
写真家
1977年 静岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。東京の写真スタジオ"FOBOS"で写真のキャリアをスタート。
現在はN.Y.で広告写真の分野で活躍中。個展も多く開催している。子供のポートレートを得意分野としている。