暴力ゲーム規制に違憲判定

米連邦最高裁は627日、カリフォルニア州が制定した暴力的なビデオ・ゲームの子供向け販売規制は、憲法修正第1条で保障された“表現の自由”を侵害するとして、違憲とする判断を下した。9人の判事のうち7人が違憲と判断した。 

違憲派を代表して意見文を書いたアントニン・スカリア判事は、「州政府には子供を危害から守るための合法的権力が与えられているが、どんな表現が子供に不適切であるかを自由に制限する力は与えられていない」とし、“表現の自由”の権利は原則として未成年者にも適用されると、結論付けた。また同判事は、極度な暴力シーンが含まれるゲームには、ゲーム業界が警告文を表示する“評価システム”を自発的に導入していることなどを挙げたほか、子供への影響を心配する保護者がビデオ・ゲームを事前にチェックすることも可能なはずだと述べた。


米国にはビデオゲームが備わった家庭が4600万軒もあるといわれるだけに最高裁の判定に大きな関心が寄せられ、違憲判定は同日夕方のネットワークテレビ・ニュースでも大きく取り上げられた。


カリフォルニア州は2005年に、性的暴行や殺害シーンなど残虐な内容を含むビデオ・ゲームは、子供に心理的なダメージを与えるばかりか、暴力的な行為を是認する子供たちを増やすことにもつながりかねない。「子供にとっての新たな脅威」として捉えるべきだと、販売規制法を制定した。これに対し、年間売り上げ100億㌦以上の市場を抱えるゲーム業界は「表現の自由を侵害する」として提訴、07年に連邦地裁が違憲判決を下したほか、連邦高裁も違憲判決を支持していた。


ハリウッドを代表するMPAA(米国映画協会)や憲法修正第1条を守るメディア業界非営利団体(The Media Institute)などからは、最高裁の判決を歓迎する声明が一斉に発表されたが、テレビ番組やエンタテイメント業界などの監視にあたる団体Parents Televison Council(親たちのテレビ会議)からは、「最高裁はエンターテイメント業界の声のみを聞き入れ、親たちの声には耳をふさいでしまった」などと、判決を非難するコメントを出した。 

<テレビ朝日アメリカ 北清>