泣いてばかりはいられない

祭りで賑わうリトルトーキョーに

浴衣を着た若い女性がいた。

手にはプラカード。

28人の家族と友人を亡くした」と書いてある。

ロキータ・皇(すめら)さん(27)は、仙台市出身。

震災で兄をはじめ、親類8人、友人20人を失った。

皇さんは、仙台育英高校外国女子を卒業後、米国行きを希望した。両親には大反対された。家族の中で兄の小野龍弘さん(33)だけが賛成して応援してくれた。渡米後、米国人と一度結婚した。現在はMBAを取るために大学に通っている。

 

震災でその龍弘さんが行方不明になった。松島市で釣りをしている最中に津波にさらわれた。龍弘さんには2人の子供がいた。妻は待望の男の子を妊娠中だった。龍弘さんが見つかったのは3ヵ月以上たった6月末。松島市の利府アリーナだった。遺体はDNA鑑定で本人と確認された。皇さんは、龍弘さんが好きだった。小さいころ一緒に遊んでくれた。魚釣りにも行った。

 

石巻市の従兄弟や伯母、あわせて7人も亡くなった。このうち1人の従兄弟は津波を生き延びたが、自殺した。毎晩、うなされていたという。皇さんは多くの友人も失った。小中高校の同級生あわせて20人が津波にのまれた。

 

 皇さんはロサンゼルスで泣き続けた。鬱の症状も出た。震災から4ヶ月がたち、生き残った姉と話すうちようやく、立ち上がることが出来た。兄や従兄弟たちのために何かをしようと思った。寄付金を集めるためのチャリティーイベントをしようと決めた。

 

 皇さんは、これまでロスの日本人社会をあえて避けてきた。「勉強をしに来たアメリカで、なんで日本人と一緒にいなければいけないのか」と思っていた。 しかし、寄付金集めの活動で、一番親身になってくれたのは、日系コミュニティーだった。アメリカ人も協力や同情をしてくれたが、言葉だけの人が多かった。日系人は逆に、言葉は少なくても、黙って泣いてくれたり、何も言わずに行動で示してくれた。温かかった。皇さんは「自分のいるべき場所を見つけた」と感じた。

 

 これまでに企業などからの寄付金は160万円に達した。計画していたチャリティーイベントもようやく731日(日)に実現する。集まった寄付金は故郷の仙台市に寄付する。

イベントは731日午後4時から10時まで。カリフォルニア州立大学LA

CSULA   5151 state university drive, Los Angeles CA) 

着物のファッションショーなど、寄付金集めだけではなく来場者が楽しめる内容だという。

サイトはこちら http://hopeforsendai.com/

 

<NY支局 山野孝之>