米国の債務上限問題は与野党が妥協し、米国債の債務不履行は免れた。この問題について米国のガイトナー財務長官は2日、米ABCテレビの朝のニュース番組でこう話した。
「ワシントンで繰り広げられた政治ショーで米国の信用は大きく傷ついた」
わからないでもない発言である。
債務上限問題は、借金まみれの米国の実態を浮き彫りにしたが、市場からすれば、そのようなことはわかった上で、日々をすごしていた。大問題ではあるが、「まあ、とりあえず」と売り買いの中心材料にはしていなかった。
ところが、来年の大統領選をにらんだ政治的思惑でデフォルトの危機にまで問題は発展してしまった。景気回復のペースが急激に鈍り、「これはやばいぞ」と思い始めた財政当局からすると迷惑な話である。
財政当局を擁護するわけではないが、確かに、今回の騒動は市場にとっても「余分なこと」だった。無用な(無用ではないかもしれないが、とりあえずなくてもすんだはずの)不安感が経済全体に広がってしまったからだ。
デフォルトが回避され、大統領が財政法に署名した2日、マーケットはほっとした表情を見せなかった。
ダウ平均株価は全面安となり終値で265.87ドルも下落した。円を戦後最高値の近くに追い込んでいるドル売りの流れは変わることはなかった。
一方で安全資産とされる金の先物価格が猛烈に上昇し、投機マネーがリスクを回避しようとしていることが明確になった。
債務上限問題のゴタゴタが経済状況をより深刻に映し出し、結果的に市場を一段と冷やした訳だ。関係者の間で「二番底」という言葉が再び使われるようになった。
格付け会社は、とりあえず、米国債の格下げをしないようだが、「いつでもやるぞ」と言っている。
オバマ大統領は財政再建と景気対策を同時にしなければならなくなった。
これは曲芸である。
歴史はひょんなことから、まったく違う道に進むと言われる。目立ちたがりのパフォーマンスが米国の経済を大きく変えるのかもしれない。