完全地デジ化でテレビメーカーに試練

日本の地上波テレビが724日、デジタル放送に完全移行した(東日本大震災の被害が大きかった東北3県を除く)。これを受けて、米総合情報会社ブルームバーグは、「58年間にわたったアナログ放送に幕を閉じ、アジアで初の地デジ放送国となった」と紹介するとともに、「今後は日本国内におけるテレビ需要が急速に落ち込み、日本のテレビメーカーは海外に戦場を移さなければならなくなるだろう」と分析している。 

 

ドイツの市場調査会社ジーエフケー(GfK)マーケティング・サービスの日本法人GfKジャパンのデータを引用し、「移行日を前にテレビの買い替えが64週には前年同期比の2倍以上とピークに達したが、今後日本国内のテレビ需要は大幅に減少する」と伝えている。調査会社ディスプレイ・サーチ社によれば、2010年には前年比63%132億㌦(約1560億円)を記録した日本国内のテレビ受像機売上高は、今年44%の減少を示し、来年はさらに47%減少する見込みだ。


ブルームバーグは、日本最大の家電メーカー、パナソニックが同社製造のテレビ受像機の41%を、またテレビ販売最大手シャープが56%を国内で販売してきたことを取り上げ、これらの会社がデジタル放送への完全移行が終了したことで縮小する国内需要にどう対処するのか、大きな転換期を迎えるだろうと解説している。


一方、日本の放送事業者が返還したアナログ波の跡地利用に日本政府が携帯電話、交通情報、情報端末向けの新サービス展開を念頭においていることを紹介、ソフトバンクが今後2年間に1兆円(約130億㌦)規模の投資を計画するなど、日本のIT企業各社が無線通信を利用した新規ビジネス立ち上げを狙っている、と紹介している。


また、業界誌ハリウッド・リポーターは、返還された帯域を使って新たに11の衛星放送が立ち上がることを紹介。中には「電話盗聴事件で廃刊に追い込まれた英国新聞を傘下に置く」ニューズ・コーポレーションの衛星放送事業者Foxインターナショナル・ジャパンが含まれていることを取り上げている。そして、現在あるチャンネル数が一挙に倍増、競争が激しくなるとともに、新衛星放送事業者が一部無料放送を展開することで業界内に不協和音が生じていることを指摘している。

<テレビ朝日アメリカ 北清>