新労使協定合意で米メディア界に安堵感

今年3月で期限切れとなっていた米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の新労使協定が725日、締結された。3月半ばから断続的に続いていた交渉がようやく実り、経営者側による選手に対する施設封鎖(ロックアウト)も解除され、新シーズン(2011-12年シーズン)は予定通り93日に開催されることになった。合意発表を受けて、ファンはもとより、米放送事業者から一斉に安堵や歓迎の声が上がっている。 

 

なにしろ、NFL試合中継番組は各ネットワークテレビなどにとって高視聴率を稼いでくれるドル箱番組。シーズンは9月から12月までと短いものの、例えばNBCネットワークが日曜日のプライムタイムに放送する『サンデーナイト・フットボール』は、昨シーズン平均視聴者数2140万人を引き付けた同ネットワークにとって最も人気のある番組にランクされている。同社プライムタイム全体の視聴率を14%も押し上げる強力な番組なだけに、NBCスポーツ・グループ部門のマーク・ラザラス会長はNFL労使間の合意を受けて、「これでフットボールに集中できる。興奮している」などとする特別なステートメントを発表した。NBCは来年2月に開催予定のNFL王者決定戦で米テレビ界の最大イベント『スーパーボウル』のホスト局でもある。


ちなみに、仮に交渉がまとまらず選手が試合を放棄した場合の損害総額は、テレビ局のCM収入やスタジアムの入場料など合わせて120億㌦(約9600億円)を超える(アドバタイジンング・エイジ)などとする試算も出ていて放送事業者はもとより広告業界も交渉の行方を固唾を呑んで見守っていた。


NFL試合中継番組はNBCのほか、ABCを除く地上波ネットワークすべてにとって「高視聴率を確約してくれる番組」となっているばかりか、ABCの姉妹局、スポーツ専門ケーブル局ESPNがシーズン中月曜日に放送した『マンデーナイト・フットボール』も平均視聴者数1470万人を獲得、ケーブル局が放送するシリーズ番組としては史上最高の人気番組になっている。


放送事業者は年間40億㌦超(約3200億円)の放送権料をNFLに払っている模様だが、悩みは視聴率が上がれば上がるほど権料の値下げ交渉が難しくなること。また、ネットワーク関係者からは、「NFLへの依存度があまりにも高くなりすぎている」などと、他プライムタイム番組の開発がおろそかになることを恐れる声も上がっている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>