ウィンブルドン全放映権をケーブル局が獲得

テニスの4大国際大会のひとつ、ウィンブルドン選手権の米国内放映権がケーブル局に渡ることになった。同大会の主要ゲームを過去43年間に渡り独占放送してきたNBCネットワークは声明を発表し、「同選手権を放送し続けて行きたかったが、ライバルに高値をつけられてしまった」と無念な心境を明かしている。 

 

NBCに競り勝ち、ウィンブルドン大会の全試合を独占放送する権利を得たのはウォルト・ディズニー傘下のスポーツ専門局ESPNESPNはこれまでにもウィンブルドンの初戦ラウンドを放送してきたが、新契約のもと、来年から12年間に渡り全試合を一括放送する。同社は試合のマルチメディア・プラットフォーム配信の権利も取得。試合の模様は、姉妹会社であるABCネットワークやブロードバンド・サイト「ESPN3.com」などを駆使し全試合を放送して行くことにしている


米メディア業界からは、「看板番組の一つがNBCを去っていく」「ビッグ・イベントは4大ネットワークが放送するというのが常識だったはず」などと、驚きを隠せない声も上がっている。しかし、NFL(米プロフットボール・リーグ)試合、大学バスケットボール・リーグやフットボール・リーグの試合など、数年前ならネットワークテレビでしか放送されなかったビッグ・イベントの一部がケーブル局でも放送されるようになっており、大方はケーブル局台頭を裏付ける象徴的な出来事として捕らえている。


ところで、大会の運営に当たる「オール・イングランド・ローンテニス・クラブ」の最高経営責任者イアン・リッチー氏は記者会見で、「2週間にわたる大会を一つの声で伝えることが非常に重要なことだと考えてきたが、今回の契約でそれが実現できた」と述べ、かねてから一社独占放送の可能性を模索していたことを示唆している。今回の発表を受けて、(ウィンブルドンのように)1イベントが1放送事業者により一貫して放送されることがファンにとって望ましい姿だ(アドバタイジング・エイジ誌)などと新契約を歓迎する声が上がっている。 


しかし、米国では高騰を続ける放映権を単独で支えられるネットワーク・テレビが少なくなっているのが現状で、今後はむしろ様々なスポーツ・イベントが地上波ネットワークテレビとケーブル局が分担して放送するケースが増えていくかもしれない。 

<テレビ朝日アメリカ 北清>