米メディア企業の2011年4-6月期決算が相次いで発表され、各社軒並み好調さをアピールした。ABCネットワークやスポーツ専門ケーブル局ESPNなどを傘下に置く米メディア・娯楽大手ウォルト・ディズニーがこのほど発表した2011年4-6月期決算は、主力の放送事業部門やテーマパーク事業が好調だったことを受けて、売上高は前年同期比6.7%増106億7500万㌦(約8540億円)、純利益は市場の予想を上回る14億7600万㌦(約1180億円)(前年同期比10.9%増)を計上した。
グループ全体の成長エンジン役を果たしている放送事業部門の営業利益は前年同期比11%増となる20億9000万㌦(約1672億)。番組制作予算の削減と広告収入が増加したABCネットワークの寄与もあるが、特にESPNがケーブルテレビ(CATV)事業者などから得る再送信料の大幅アップが大きく貢献した。
テーマパーク・リゾート部門は、割引していた入場料を通常に戻したことなどが功を奏し、営業利益は同9%増となる14億8000万㌦(約1184億円)、売上高31億7000万㌦(約2536億円)を記録した。米国債の格下げに端を発した株式市場の急落など市民の間で経済不安が広まっているが、ディズニーの最高経営責任者(CEO)ロバート・アイガー氏は、「いまのところ入場者数などへの影響はまったく見当たらない」と語っている。
一方、映画部門の営業利益は60.2%減となる4900万㌦(約3920億円)に留まった。『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』などが一定のヒット作になったものの、昨年のヒット作『トイ・ストーリー3』や『アイアンマン2』などに及ばなかったことや製作コストの高騰が響いた。
Foxネットワークやウォールストリート・ジャーナル紙の親会社ニューズ・コーポレーションの同期における売上高は前年同期比10.5%増の89億6200万㌦(約7170億円)となった。ただ、純利益は交流サイト大手「マイスペース」の売却に伴う損失計上などが響き、同21.9%減少となる6億8300万㌦(約546億円)だった。部門別でみると放送事業の売上高が同15%増の21億5000万㌦(約1720億円)と好調さが目立っている。
若者向けケーブル局FXやニュース専門局Foxニュース・チャンネルなど傘下のケーブル局群が絶好調で、売上高は14.5%増21億5100万㌦(約1780億円)を記録。営業利益は6億3100万㌦(約505億円)と、ネットワークテレビ(Fox)、映画部門(20世紀Fox映画)など他事業の合計を上回るほどだった。地上波ネットワークテレビも、広告収入が伸びたことに加え、番組制作予算の削減が効いて営業利益は約2.1倍となる2億3300万㌦(約186億円)を計上した。
決算発表にあたった同社のルパート・マードック会長には英国で廃刊に追い込まれた傘下の大 衆紙の盗聴問題に質問が集中したが、マードック氏は、「責任者の厳重な処分と、同様な問題が再発しないようあらゆる手段を講じていく」としながら、「他の 事業には実質的な影響は出ていない」と強調した。
米ケーブルテレビ(CATV)事業者最大手コムキャストの2011年4-6月期の決算を見ると、映像(テレビ番組)配信サービスの加入者数の減少傾向に歯止めがかからなかったものの、ブロードバンド(高速大容量)通信サービスや電話サービスへの加入者が増加したこと、さらにはNBCユニバーサル(NBCU)の買収効果が効いて、前年同期比51%増となる143億3000万㌦(約1兆1464億円)を記録した。純利益は同15.6%増の10億2000万㌦(約816億円)だった。
同社の増収増益に大きく貢献したNBCUは、地上波テレビNBCネットワーク、さらにはUSAネットワークやBravo、MSNBCなどのケーブル局群を傘下に置くメディア企業だが、売上高は前年同期比12.6%増、全売上高の約35%を占める52億㌦(約4160億円)だった。NBCネットワークはシーズンを通した視聴率は芳しくなかったものの、広告収入の改善、番組再販が好調だったことが寄与し、売上高は18.5%増となる16億9500万㌦(約1356億円)だった。一方、傘下で突出した好調さを示すケーブル局の売上は12.6%増21億7300万㌦(約1738億円)だった。
<テレビ朝日アメリカ 北清>