テニスの4大大会の今季最終戦「全米オープン」が8月29日、2週間の日程でニューヨークで開催された。試合の模様は放映権を握るCBSネットワークやスポーツ専門局ESPN、さらにはテニス専門局Tennis Channelが放送したが、インターネット上でも積極的に動画中継され注目された。
動画中継に力をいれたのは主催者である全米テニス協会(USTA)。USTAのAdvanced Media(アドバンスト・メディア)部門の責任者、フィル・グリーン氏は、動画中継促進の背景についてテレビ朝日アメリカに、「我々(USTA)の目標は、スポーツ界の革新的リーダーになること。そのためには、(テレビ以外に)様々な方法で試合の模様を見たいと考えるファンの要望に応えることが重要だ。ファンのニーズに応えられなければ、(スポーツ組織として)失敗するだけだ」と説明した。
「CBSなど高額な放映権を払っている放送事業者からの反対はないのか」との問いには、「ライツ・ホルダーとは十分話し合いをした結果だ」と述べるに留まり、詳細は明らかにしなかった。動画中継による新たな視聴者の開拓が放送にも好影響を与えるとのUSTAの考え方を放送事業者が受け入れたものと見られる。USTAは動画中継権を昨年取得した。
昨年は試合に使われる17のコートの中からテレビ中継の対象にもなった5つのコートを選び全試合の模様を動画中継したところ、サイトへのビジター数は4000万件、ユニークビジター数は1240万件、ページビュー数は2億9800万件に上ったという。USTAでは今年のオンライン視聴者数はさらに増えたとの手ごたえを得ている。今年は動画中継の対象となったコートを6コートに拡大した。
USTAによれば、動画中継についてはスポンサーからも強い関心が寄せられている。今年もIBM、メルセデス・ベンツ、乳製品メーカー大手Stonyfield(ストーニー・フィールド)などが、テレビ版とともに動画中継のスポンサーにも名を連ねた。
動画サイトについてはしばらく無料配信を続ける予定だが、「我々は常に収益化を念頭に置いている。無料放送を止める考えは当面ないが、様々なオプションを検討していくつもりだ」(USTA)とのスタンスで、まずは動画中継の普及を促し、将来的には有料型に移行することを模索している模様。
<テレビ朝日アメリカ 北清>