米ネットワークテレビ界の新シーズン(2011-12年シーズン)が9月8日、NBCのNFL(米プロフットボール・リーグ)開幕戦中継番組を皮切りに順次始まった。新シーズンの特徴は、各ネットワークテレビが、ドラマ番組に変わってコメディー番組の編成に力を入れていることだ。
米広告代理店大手インターパブリック傘下の調査機関「マグナ・グローバル」によれば、4大ネットワークテレビ(ABC、CBS、Fox、NBC)が新シーズン・プライムタイム(午後8-11時)に編成するドラマ番組の放送時間は計42時間と昨シーズンの53時間に比べ大きく後退する。コメディー番組は逆に昨シーズン8時間だったものが、新シーズンでは10.5時間に拡大するという。
コメディー番組ルーキーの中では、NBCの『Whitney(ウィットニー)』(未婚ながらも同居生活を送るカップルをめぐる様々な交友関係)や、失恋した若い女性が3人の男性ルームメートと共同生活をおくる様をウィットに富んだ脚本で描くFoxの『New Girl』 などの前評判がいたって高い。
また、コメディー番組に加え、視聴者参加型のリアリティー番組が増えることも確実な情勢だ。視聴率トップ(18~49歳層)番組として7年連続ランクされ、今や米テレビ界を代表する人気番組になっているFoxネットワークのオーディション番組『アメリカン・アイドル』に触発されたかたちで、同ネットワークは別のオーディション番組『Xファクター』を今シーズンからデビューさせることを決定、業界中の注目を集めている。
コメディーやリアリティー番組が増えることについて、マグナ・グローバルで視聴者分析にあたるブライアン・ヒューズ氏は、「ネットワークにとって、両カテゴリー番組はドラマ番組に比べ制作費が安価に済むこと。そして、コメディー番組についてはケーブル局や海外テレビ局などへの番組再販が活発に行われていることも魅力になっている」と説明する。
さて、放送時間が減ったとはいえ、ドラマ番組への期待も例年以上に高い。大型制作予算でも話題になっている、Foxネットワークの大型冒険ドラマ『Terra Nova』(スティーヴン・スピルバーグ監督プロデュース)やCBSの力作で億万長者に雇われ犯罪を未然に防ぐ任務につく元CIA諜報員を描く『Person of Interest』(J.J.エイブラムス監督プロデュース)などと、これまでのテレビ番組に比べ、異色かつオリジナル性に富んだ重厚番組が揃っている。
また、団塊世代向け番組も目立っている。かつて世界最大手の航空会社だったパンナムのスチュワーデスたちを主人公にした『Pan Am』(ABC)、さらには『プレイボーイ・クラブ』(NBC)など、1960年代を舞台にしたドラマも登場する。「全体に、これまでのシーズンに比べ有望な番組がそろったシーズンになりそうだ」(米メディア代理店ハームリン・メディア社副社長シャロル・クリアー氏)。
<テレビ朝日アメリカ 北清>