高騰続けるスポーツ放送権に懸念の声も

米メディア企業がスポーツ番組の放送権取得に奔放している。ウォルト・ディズニー傘下のスポーツ専門局ESPN20118月上旬、テニス大会の4大国際大会の一つ、ウィンブルドン選手権の米国内放映権を、これまで同イベントを43年間にわたって独占放送してきたNBCネットワークに競り勝ち、向こう12年間にわたる長期独占契約を獲得すれば、同月下旬にはCBSネットワークとNBCネットワークが米国プロゴルフ協会(PGA)との間に結んでいる独占放送契約を、現行の契約が満期となる2012年を待たずに13年から21年まで9年間にわたる長期契約を結ぶ、といった具合だ。

 

そして9月上旬にはESPNが同局の看板番組となっているアメフト中継番組「マンデー・ナイト・フットボール」の放送権利期間をNFL(米プロフットボール・リーグ)との間に2021年まで延長する契約を結んだ。新契約ではESPNNFLに対し年間推定19億㌦(約1520億円)、合計総額152億㌦(12160億円)超を払うことで合意した模様。現行の契約は13年まで有効だが、両者は期限切れを待たずに2年も先行して新契約を締結したことになる。権料も現行の年間11億㌦から倍額近いものとなり、スポーツ物件の中でもとくにNFL試合が飛びぬけて高額なものであることを改めて鮮明にした。ESPNは、テレビ放送のみならず、試合を同社のインターネット・サイト、アップル社の人気タブレット型情報端末アイパッドなどに配信する権利や3D3次元)放送、さらには一部国際配信権なども獲得した模様だ。


NFLの中継番組はFoxCBSNBCの地上波ネットワークも保有しているが、NFLとの契約期間は13年まで。NFLは今シーズン終了までには新契約交渉を終えたいとの考えを示しており、各社ともESPNなみの年間10億㌦台を請求されるのは必至とみて戦々恐々といったところだ。3大ネットワークの現行年間放送権料はいずれも約67億㌦とESPNのものを下回っている。


こんな状況に、米有力紙ロサンゼルス・タイムス紙が、「スポーツ権料はどこまで上がるのか」と題した記事で懸念の声を上げている。米国ではテレビ世帯の9割が、ペイ・テレビ・サービスと呼ばれるケーブルテレビ(CATV)や衛星放送事業者が提供する再送信サービスに加入してテレビを見ているが、放送権料が上がればペイ・テレビ加入料の値上がりにつながり、結局は消費者が犠牲を払う羽目に陥ると見ているからだ。


ただ、ドラマ番組などの視聴率が停滞気味の中で、NFL試合の平均視聴者数が1800万人(昨シーズン)などとスポーツ番組が黄金時代を迎えており、しばらくは権料高騰傾向は収まりそうにない。 

<テレビ朝日アメリカ 北清>