オンデマンド・サービス不振の裏側

ペイ・テレビ事業者と呼ばれている米国のケーブルテレビ(CATV)と衛星放送、さらには電話会社(IPテレビ)の間で、あるオンデマンド・サービスの衰退が深刻な問題として浮上している。そのサービスとは、アダルト・チャンネルと呼ばれている成人向け番組専門チャンネルだ。オンデマンドあるいはペイー・パー・ビュー(PPV)と呼ばれる有料チャンネルで提供されているが、その利用回数が急減していて、普段はペイ・テレビ事業者が公の場で取り上げることのない専門チャンネルがスポットライトを浴びている。

 

米有力経済紙ウォールストリート・ジャーナルがこのほど報じたところによると、例えば、全米第2位のCATV事業者「タイム・ワーナー・ケーブル(TWC)」の46月期におけるオンデマンド・サービスの売上高は前年同期比1400万㌦(約112000万円)減少したが、その三分の一がアダルト・チャンネル利用の減退によるものだという。同期におけるTWCの売上高は49億㌦(約3920億円)で、アダルト・チャンネルの売上高はそれほど大きくないが、収益率の高さでは群を抜いていて、TWC経営陣の頭痛の種になっている。他ペイ・テレビでも同様で、衛星放送大手「ディレクTV」も同期決算発表の中で、アダルト・チャンネルの不振が同社の有料チャンネル全体のビジネスに大きく響いていることを認めている。


アダルト・チャンネル不振の理由は、インターネットだ。決算報告にあたったTWCの最高経営責任者(CEO)グレン・ブリット氏は、「ポルノがインターネット上のサイトで無料で見られるようになったため、アダルト・チャンネルの需要が低下傾向を示している」と分析している。米インターネット調査会社「Experian Hitwise」によれば、08年以来アダルト・サイトの閲覧時間は26%も増大している。


米調査会社SNLケーガンによれば、2010年におけるペイ・テレビ事業者のアダルト・チャンネルによる売上高は89900万㌦(約720億円)と、ピークだった08年の10億㌦(約800億円)を大きく割り込んでいる。


アダルト・チャンネルの全体像についてはペイ・テレビが明らかにしておらず不透明な部分が多いが、ペイ・テレビ側が制作者側に売上の9割を要求するなど、利幅の大きい事業となっていたようだ。ちなみに、TWCでは同社のオンデマンドやPPVで、ハリウッド映画の視聴料金は4.99㌦(約400円)に設定しているが、アダルト・チャンネルには9.98㌦とほぼ倍額を課している。 

<テレビ朝日アメリカ 北清>