米長寿アニメ番組が打ち切りの危機脱出

米テレビ界を代表するFoxネットワークテレビの長寿番組『ザ・シンプソンズ』が番組打ち切りの危機を脱した。今シーズンで23年目に突入した同番組は現在ネットワークテレビのプライムタイムで放送されている番組の中で最長記録を更新中。しかし、ここ数年は視聴率の低下にともなう広告収入の減少で、Fox側は制作費の大幅削減なしでは来春以降の放送を断念せざるを得ないとしていた。

 

Foxが求めたのは同番組声優出演料の大幅削減。現行契約では主役級の6人の声優に1エピソード当たり40万㌦が支払らわれているが、Foxサイドは10月上旬、45%のカットを求めた。これに対し声優側は25%減30万㌦が許容範囲と主張、話し合いは物別れに終わった。これを受けて、ハリウッドには、「シンプソンズがとうとうお茶の間から消えてしまう」などと悲観的なムードが広まり、ニューヨーク・タイムズ紙など一般紙も一斉に番組終焉の可能性を報じた。しかし、数日後行われた交渉で、双方が30%削減案を飲むかたちで話し合いが決着。Foxは来シーズン以降2年間の放送を約束した。


シンプソンズは社会風刺がテーマで、ファン層の多くが成人で占められている。プライムタイムで放送される数少ないアニメ番組の一つだが、同番組の会話が流行語になるなど社会現象になったこともある。同番組は長年にわたりFoxに安定した視聴率で貢献したばかりでなく、世界のテレビ市場に番組販売されているほか、DVDやビデオゲーム、さらにはTシャツ、人形などのグッズが貴重な放送外収入をもたらしてくれる大事な番組だ。


実は同番組と声優による契約交渉は過去何度も暗礁に乗り上げたことがある。90年代後半には1エピソード当たりの出演料が125000㌦だったものが、04年、08年の契約更改交渉の結果、現在の40万㌦に至ったという。08年の交渉では声優側が50万㌦を要求したのに対し、番組は30万㌦を主張、この時も番組の存続が危ぶまれたという。


ところで、米調査会社RBCキャピタル・マーケット社によれば、仮に同番組が来春をもって打ち切られた場合、Foxが番組の再販権を得るため、Foxに大型ボーナスが転がり込んでくるシナリオがあったという。アーカイブにたまった過去506本にも上る番組は、ケーブル局などに1本100200万㌦で再販出来る、金の卵的な存在だ

<テレビ朝日アメリカ 北清>