反格差デモ タイムズスクエア集結で80人以上逮捕

タイムズスクエア周辺 15日
タイムズスクエア周辺 15日

 15日のタイムズスクエアは人で埋め尽くされた。「Occupy Wall Street」が集会を呼び掛けたのは15日の午後5時。

ミュージカル目当ての観光客がちょうど早めの夕食に出掛ける時間だ。ダウンタウンの金融街から、6アヴェニューを延々と行進を続けたデモ隊がタイムズスクエアにつくころには、すでに待ち構える参加者と観光客で身動きも出来ない状態。ニューヨーク市警は、道幅の狭い46番街にデモ隊を誘導し全員をタイムズスクエアに入れない戦術を採った。

 

 

銀行店内で抗議活動をして逮捕された男性 15日
銀行店内で抗議活動をして逮捕された男性 15日

 デモは15日午前から始まった。

デモは、まずウォール街の銀行、特にチェイス銀行の周辺を練り歩いたあと、北上を開始。人数を増やしながらタイムズスクエアまでの約6.5キロを歩いた。

 

「非暴力」をモットーのひとつに掲げるデモ行進は基本的に穏やか。先導役の男性ら数人が、随伴する警察官と常に相談しながら行進を続けた。

 

 それでも、行進だけでは満足できない参加者はいる。途中、大学街のワシントンスクエア近くでは、一部のデモ隊がシティバンクの店内に入った。自分たちの口座を抗議の意思表示のために閉鎖しようとしたが、銀行側に通報され22人が逮捕された。

 

逮捕されても笑顔 15日
逮捕されても笑顔 15日

 タイムズスクエアに近づくと、デモ参加者の人数は、どんどん増えだした。

参加者は6アヴェニューの両側の歩道を埋め始めていた。

緊張が一気に高まったのは、警察がデモ隊を狭い46番ストリートに誘導した直後だった。目前に見え始めたタイムズスクエアに向かって走り始める参加者が次々に逮捕された。

さらに、すでに動けないほど混雑していたタイムズスクエアにデモ隊が入ろうとしたことで、大混乱になった。車道に出ようとするデモ隊を騎馬警官が無理やり押し戻そうとする。あちこちで女性の悲鳴が聞こえ出す。警察も強引だったが、一部の参加者が衝突を意図的に誘発しようとしていたのも事実。「怖がるな!押せー!!」と叫びながら群集の後ろから強引に押しまくる男性もいた。

 

 

フォーダム大学 ヘザー・ゴートニー教授
フォーダム大学 ヘザー・ゴートニー教授

主催者のOccupy Wall Streetの発表では、タイムズスクエアに集まったのは数万人。

あつまった参加者は、「我々は99%」などと大合唱して、約2時間ほどで集会は終わった。

最新の世論調査(USA TODAY/Gallup)では、全米の25%がOccupy Wall Streetを支持、

19%支持しないと応えている。残りは、どちらでもないとしている。問題は、4割以上の人が

現在の経済の仕組みに不満を持っていることだ。

 

  デモの参加者の主張はバラバラで、まとまりの無い烏合の衆という見方もあるが、

そもそも同一目標がなければ意味が無いと考えること自体が古いのかもしれない。

 

 フォーダム大学のヘザー・ゴートニー准教授(社会学)は、「Occupy Wall Streetの戦術は

アラブの春、特にエジプトの運動をモデルにしている」と指摘する。カイロではタハリール広場を

拠点に、反政府運動が拡大を続け、最終的にはムバラク政権の転覆に至った。

ゴートニー准教授はOccupy Wall Streetの目標について、「来年の大統領選挙への影響を与えること、

たとえば、金融業界への規制強化などが候補の政治議題にのぼれば成功と言えるだろう」と見ている。

 

 また、コーネル大学のシドニー・タロー教授(政治学)は、今回の動きを「全く新しい形の運動」で

彼らの目的は、「何かを変える」ことではなく、「怒れる自分たちの存在を認知してもらう」ことだと分析する。

 

 Occupy Wall Street運動は、世界100都市に広がったとされる。東京でも15日に500人が参加した。

やはり主張はバラバラだったが、「不満を持っている人々がいる」という事実は伝わった。

 

 

<写真・文  NY支局 山野孝之>