タイムシフト視聴が主流の時代に

米国家庭内におけるHDD内蔵型のデジタル・ビデオ・レコーダー(DVR)の普及率が44%に到達、「タイムシフト視聴がテレビ視聴の主流になった」ことが発表された。米調査会社リクマン・リサーチ・グループ(LRG)がこのほど明らかにしたもので、DVR1台以上保有するテレビ世帯は全体の44%に達し、05年の普及率8%から急増していることが分かった。DVRは番組を手軽に録画できることから、テレビ番組表に縛られることなく、「好きな番組を好きな時間に」視聴するタイムシフト視聴を助長するといわれている。

DVR視聴については、録画した番組を視聴する際にCMの飛ばし視聴が容易なことから、広告主の間では普及に対し警戒感を示す向きが多い。

米国ではタイムシフト視聴の増大にともない、番組の視聴率測定も、放送時の視聴率に加え、DVRなどを使った見逃し視聴が加味されるようになってきている。米テレビ視聴率測定に当たるニールセンは、当日と放送後3日間のDVR視聴を合わせた新基準「C3」を発表するのが慣例となってきており、「もはやテレビ番組の成否を放送時の視聴率だけで判断することは愚かな手法であることを皆が認めている」(ニューヨーク・タイムズ紙)のが現状だ。

ちなみに9月中旬から始まった新シーズン(2011-12年シーズン)を見ると、Foxネットワークの新コメディー番組『New Girl』(毎週火曜日21:0021:30)の初回の視聴率は広告主が重視する1849歳層で4.8%だったが、C3では6.7%29%も上昇している。他にもABCネットワークのコメディー番組『Modern Family』にいたっては放送時の同層の視聴率が2.4%だったのに対し、放送後7日のDVR視聴を加えると、なんと38.7%8.6%となることも発表されており、プライムタイム番組のほとんどがDVR視聴に視聴率が底上げされているのが現状だ。

同調査では、タイムシフト視聴のもう一方のツールであるビデオ・オンデマンド(VOD)サービス利用の実態も明らかになった。テレビ番組再送信サービスの一つ、ケーブルテレビ(CATV)事業者が提供するデジタル・ケーブルの加入者の73%VODサービスを使ったことがあると答えたほか、9月にVODを利用したことがあると答えた人は全体の62%に達し、昨年同月の52%から10%も上昇していることが分かった。

<NY北清>