開始後1ヶ月がたった米テレビ界の新シーズン編成に異変が起きている。金曜日のプライムタイムが土曜日化しているというのだ。米テレビ界では、土曜日の視聴者数が他の曜日に比べ極端に落ち込むというのが常識。「番組を見てくれないのなら、安価な番組で編成を」と、費用対効果を追求する各ネットワークは、再放送番組や制作コストの廉価な番組で同夜のラインアップを編成している。
ところが今シーズンの金曜日の視聴者動向を見ると、若者視聴者を中心にテレビ離れがより顕著になっていて、「金曜日が土曜日と同様になってしまう」などと、 ネットワークテレビのみならず、ケーブル局経営者も危機感を抱いている。「一層のことプライムタイム枠すべてを再放送番組でうめたらどうか」(某ネット ワークテレビ関係者)などと極端な意見も出始めているようだ。
もっ とも金曜夜の視聴者数がもともと多かったわけではない。「花の金曜日」とあって外出組が多く、テレビ人口が減ることから、ネットワークテレビも制作コスト の低い、報道番組や二流のリアリティー番組などを編成するのが慣例となっていた。ケーブル局の間でも、若者に圧倒的な人気のコメディー・セントラルで毎夜 放送されている政治風刺ニュース風番組「ザ・デイリー・ショー」などは当初から金曜日夜だけは放送されていない。
しかし、金曜夜がまったくの不毛地帯であるわけではない。CBSが22時台に放送している警察ドラマ「Blue Bloods」(写真・上)は平均1100万人以上の視聴者を引き付けている。視聴者の年齢中央値は61.1歳と広告主がターゲットにしている年齢層18-49歳層を大幅に上回っているが、同番組視聴者の年間平均所得が10万㌦以上と比較的裕福な層であるため、番組のCM販売は好調に推移しているという。
また過去の例を見ても、同ネットワークの大ヒット番組になった「CSI:犯罪捜査班」は金曜日夜に放送されていた番組だ。
ヒットすると他の曜日に移されてしまうことも金曜日不調の要因の一つだが、CBSネットワークの市場調査部門責任者デイビッド・ポルトラック氏は、「金曜日はDVR視聴が盛んに行われる夜だ」と分析している。HDD内蔵型のデジタル録画機(DVR)に録画しておいた月曜日から木曜日までの番組を金曜夜に“まとめ視聴”する人が少なくないからだ。また、在宅の若者の中にはビデオ・ゲームを楽しむ人も多いほか、高校のアメフト試合が金曜夜に重なっていることなども、同夜テレビ人口の減少につながっている模様だ。
ところで「金曜が土曜日化」していないネットワークテレビもある。ユニビジョンに代表されるスペイン語放送だ。同ネットワークでは金曜日夜における18-49歳層の視聴者数が300万人以上と4大ネットワーク(ABC、CBS、Fox、NBC)を凌駕するまでに至っている。「ヒスパニック系アメリカ人は若者層が圧倒的に多い上、テレビ好きがそろっている。DVR利用度が低く、生番組を楽しむ傾向が高い(セサ・コンデ、ユニビジョン社長)という。 <テレビ朝日アメリカ 北清>