ネットワークテレビやケーブル局などを傘下に置く米メディア企業の2011年7-9月期の決算がこのほど相次いで発表された。前期に続き、増収増益を記録した企業が目立つ中、テレビ事業部門を見ると、地上波ネットワークテレビを尻目にケーブル局の好調さがグループ全体の収益に貢献しているのが特徴だ。
NBCユニバーサル(NBCU)の経営権を握った米ケーブルテレビ事業者最大手「コムキャスト」の同期決算は、映像配信サービス解約数が前年同期に比べ改善したことに加え、高速インターネット・サービス加入者数が大幅に増えたことなどが寄与したほか、NBCUを買収したことで押し上げられ、売上高は前年同期比51.1%増となる約143億㌦を記録した。純利益は前年同期比4.7%増9億800万㌦だった。
NBCUを見ると、ヒット作にめぐまれなかった映画部門の売上高が前年同期比7.8%減となる1o億9600万㌦と不調だったが、USAネットワークやSyFy、さらにはCNBCなどケーブル局群の売上高が同12.0%増21億㌦とすこぶる元気でグループ全体に寄与した。また、テーマパーク部門も好調で、NBCU全体の売上高は4.6%増となる52億㌦を計上した。ちなみに、4大ネットワーク中最下位と相変わらず不振を続けるNBCネットワークテレビの売上高は2.9%増15億1000万㌦にとどまった。
また、電話盗聴疑惑が浮上した英国大衆紙などを傘下に置くニューズ・コーポレーションは、同事件がもたらすグループ全体への影響が懸念されたが、ケーブル局部門や映画部門が健闘し、売上高は前年同期比7%増となる79億6000万㌦を記録した。純利益は、盗聴疑惑の余波で断念した英衛星放送スカイニューズ・テレビの買収手続にかかった費用などが響き、4.8%減7億3800万㌦と減益となった。
映画部門は、「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」の世界的な大ヒットのおかげで、売上高17億7800万㌦と大きく貢献。テレビ部門では絶好調のニュース専門局Foxニュース・チャンネル、さらには若者向けのFXチャンネルが健闘し、同部門同期の売上高は前年同期比13.2%増となる21億2000万㌦、純利益は同17.6%増7億7500万㌦を記録した。ちなみに、アメリカン・アイドルなど人気番組をかかえるネットワークテレビ部門も、売上高9億2300万㌦と前年同期比8.5%増、純利益1億3300万㌦は是年同期比26.7%と二桁台増を記録した。
一方、CNNなど有力ケーブル局、さらにはワーナー・ブラザースなど映画部門を傘下に置くタイム・ワーナーの7-9月期の売上高は前年比11%増となる70億7000万㌦に達した。ちなみに、11%増は、07年第3四半期以来最大の成長率。純利益も同57%増となる8億2200万㌦を記録した。ニューズ・コーポレーションと同様、映画部門とケーブル局群の健闘が目立っている。
映画部門は「ハリー・ポッターと死の秘宝 Part2」が米市場本年最高の興行成績を挙げるなどグループ全体の収益に大きく寄与した。テレビ部門では、CBSネットワークテレビの大ヒット番組となっているコメディー「ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則」を傘下のワーナー・ブラザースが制作していることや、同番組(旧シーズン版)を再放送しているケーブル局TBSなどの広告収入が好調なことが大きな要因となっている。 <テレビ朝日アメリカ 北清>