ネットワーク・ニュースに活気戻る

3大ネットワークテレビ(ABCCBSNBC)が全国向けに毎日放送している夕方のニュース番組が活気を取り戻している。かつては絶大な影響力を誇っていた「ネットワーク・ニュース」だが、ニュース専門ケーブル局やインターネットの普及で視聴者数は大幅に減少、「ブラウン管から消えてしまうのは時間の問題」などと、何度となく死の宣告を受けていた番組だ。

 

ネットワーク・ニュースは、ABCの「ワールド・ニュース」、CBSの「イブニング・ニュース」、NBCの「ナイトリー・ニュース」いずれも午後6時半から7時まで30分間に渡り放送されているが、米調査会社ニールセンによれば2010-11年シーズンの視聴者数が3番組そろって前年度を上回ったことが明らかになった。2001-02年シーズン以来、実に10年ぶりのことだ。9月から始まった2011-12年シーズンも、3番組合計視聴者数が2000万人を超えており、引き続き好調に推移しているという。 

ネットワーク・ニュース好調の背景には、同シーズン中に、東日本大震災、中東諸国で起こった一連の民主化運動「アラブの春」、低迷を続ける米景気など人々の関心を引き付けるニュースが後を絶たなかったことなどが挙げられている。中でも深刻さを増す経済問題がネットワーク・ニュース・カムバックの原動力になっていると指摘する向きもある。「米市民にとって最大関心事といえば経済問題。関連ニュースの分析や報道を求め、信頼感の持てるブランド(ネットワーク・ニュース)にチャンネルを合わせている」(メディア・ポスト)というものだ。


ナイトリー・ニュースのエクゼクティブ・プロデューサー(EP)、パトリック・バーキー氏は、「インターネットを使って自分でニュースを探すことが億劫に感じることがある。実は、誰かにまとめてニュースを伝えてもらうことを欲している人々は少なくないのではないか」と分析。ワールド・ニュースEPのマイケル・コーン氏も、「人々は皆ニュースに興味があるが、(重要なニュースほど)信頼がもてるキャスターやレポーターに伝えてもらったり分析してもらいたいのだ」と強調する。

 

また、ネットワーク・ニュースに視聴者が戻ってきた背景に番組作りの変化を指摘する声もある。かつて3大ネットワークの夕方ニュースといえば、威厳のあるアンカー(メイン・キャスター)が勢ぞろい。しかし、扱うニュースはほとんど同じでチャンネルの差別化が難しかった。ところが、最近は、「ワールド・ニュース」は健康問題や家庭に関連したニュースに焦点を当てる報道ぶりにシフトする一方、「イブニング・ニュース」は、海外や国内の硬派ニュースに重点を置くなど3大ネットワークがそれぞれの特色を前面に押し出すようになってきた。  <テレビ朝日アメリカ 北清>