ワールドシリーズ独占、価値あるや否や

米大リーグのワールドシリーズは1028日、ナショナル・リーグの覇者セントルイス・カージナルスがアメリカン・リーグの覇者で初制覇を目指したテキサス・レンジャースを破って5年ぶり11度目の優勝を飾った。同シリーズはFoxネットワークが独占放送権を握っているが、プライムタイムで放送された7試合の平均視聴者数は1620万人と昨年の1430万人を上回り一応の成果を収めた形だ。

 

しかし、高視聴率は試合(7回戦制)が第7戦までもつれ込んだ結果で、実は第5戦までの試合はいずれも1500万人を下回り、 同ネットワーク通常のプライムタイム視聴者数を下回っていたことが分かった。これを受けて、「果たしてワールドシリーズの独占放送権がFoxにとってどれほどの価値があるものだろうか」などと疑問の声が上がっている。

 

米調査会社ニールセンによれば、ワールドシリーズは1978年に記録されたニューヨーク・ヤンキース対ロサンゼルス・ドジャース戦の平均視聴者数4430万人をピークに、1982年にかけては平均視聴者数3720万人を下ることのない、テレビ局にとって黄金コンテンツだった。その後も、平均15002500万人で推移し、プライムタイム番組の及第点をクリアする人気を保ってきた。ところが2008年に行われたタンパベイ・レイズ対フィラデルフィア・フィリーズ戦が過去最低の1360万人を記録、昨年のワールド・シリーズも1430万人と若干盛り返したものの、1500万人には及ばない成績だった。


視聴率の低下傾向は広告主にとっても大いに気になるところだ。なにしろ平均視聴者数4430万人を獲得した78年のワールドシリーズの30CMの単価は85,000㌦だったが、視聴者数1580万人に留まった06年には同399,025㌦(ニールセン・モニター・プラス)にまで高騰している。費用対効果を重要視する広告主の中からワールドシリーズのスポンサーを再考する社が出てきてもおかしくない状況だ。

 

問題は同シリーズ視聴率の低下ばかりではない。ワールドシリーズやそれに先駆けて放送されたリーグ決勝戦放送のために、通常のプライムタイム番組が犠牲になっているのだ。今シーズン初登場し高視聴率を獲得し始めているコメディー番組「New Girl」などプライムタイム番組の中断を約3週間に渡り余儀なくされたため、「視聴習慣に悪影響を与えてしまった」などと懸念の声も上がっている。同ネットワークのエンターテイメント部門責任者ケビン・ライリー氏もテレビ業界誌などに、「出来ればレギュラー編成は壊したくない」と複雑な心境を語っている。

 

ちなみに、Foxネットワークは、ワールドシリーズ戦に加え、オールスター戦の独占権、さらに、各リーグ決勝戦をターナー・ブロードキャスティングと交互に放送する放送権を2013年まで保有している。放送権料は年間推定25000万㌦。 <テレビ朝日アメリカ 北清>