ネット上のDVRサービスが始まった

米国ではテレビ番組などを、「好きな番組を選んで、好きな時に、好きな場所で」視聴するタイムシフト視聴が急増している。タイムシフト視聴にはこれまでVCR(ビデオ・カセット・レコーダー)やHDD内蔵型のデジタル・ビデオ・レコーダー(DVR)が利用されてきたが、最近はインターネットで提供されているオンデマンド・サービスの人気がうなぎ上りだ。ニールセン社によれば、DVD宅配レンタル大手Netflix(ネットフリックス)が始めたストリーミング配信サービスの加入者が今年6月に動画視聴に費やした時間は8時間半にも上るほどでネット上のオンデマンド・サービスがすっかり定着した感がある。

 

そんな米消費者の新しい嗜好に合わせた新しいサービス「PlayLater(www.playlater.tv)9月下旬に始まった。米シアトルに本拠地を構える「MediaMall テクノロジー」社が立ち上げたもので、会員制。月額4.99㌦を払い専用ソフトをパソコン中にダウンロードすれば、ネットフリックスやHulu(フールー)などの独立系動画配信サイトをはじめ、MTVCNNESPNなどケーブル局が運営する約30の動画サイトから後日見たい番組を自由に選らんでパソコン上に取り込むことが出来る。ケーブルテレビ(CATV)や衛星放送事業者が加入者に有料で提供しているDVRに変わる“ネット上のDVRサービス”になる可能性もありそうだ。


ただPlayLaterサービスには①対応はパソコン(PC)に限られていること(取り込んだ番組を視聴できるパソコンは2台までに制限されている)②一度に数十タイトルの番組を録画するためには大容量のハードディスクが必要なこと③ブロードバンド(高速大容量)通信に加入していること、などの制約があり、普及への障害になる可能性もありそうだ。また、目下人気急上昇中の情報端末アイパッドやスマートフォンなどには対応していないことも敬遠される要素となるかもしれない。ただ、PlayOn社の最高経営責任者ジェフ・ローレンス氏によれば、情報端末向けのアプリケーションは目下開発中で、近日中に提供される見込みだ。

 

さらに、同サービスの違法性を指摘する声も上がっている。カリフォルニア州ニューポート・ビーチの著作権専門弁護士事務所のデニス・ハウエル氏はニューヨーク・タイムズ紙に、「コンテンツ・プロバイダー(番組供給事業者)から直接許可を受けているわけではなく、訴訟問題に発展する可能性もある。この点をクリアーしなければ同サービスの本格普及は難しいかもしれない」と述べている。これに対しローレンス氏は、「我々のサービスは消費者がVCRDVRを利用することと何の違いもない。まったく合法的なサービスだ」と応戦している。

<テレビ朝日アメリカ 北清>