米国でテレビを保有しない世帯数が増えている。米調査会社ニールセンがこのほど発表した報告書「Television Audience 2010 & 2011」によると、2012年におけるテレビ世帯数は全体の97%に当たる1億1470万軒と11年の99%、1億1590万軒を下回る見込みだ。テレビ世帯数が前年を下回るのは実に75年以来37年ぶり、米テレビ史上2度しかない異例のことだという。米国の人口は増加傾向にあるなか、テレビを持たない世帯が全体の3%を占めることになり、「驚くべき数字だ」(カンザス・シティー・スター紙)などと受け止められている。
テレビ台数減少の背景には、若者層を中心に、インターネットに接続したパソコンやスマートフォンなど高機能情報端末でテレビ番組を視聴する傾向が高まっているこが指摘されている。また、米国では市民の9割が、ペイ・テレビと呼ばれるケーブルテレビ(CATV)や衛星放送事業者が提供する再送信サービスに加入しテレビを視聴しているが、これらサービスの加入料は値上傾向が続いたまま。長引く不況経済で職を失った人などがペイ・テレビを解約していることも要因の一つに挙げられている。さらに、09年6月に実施された地上波デジタル放送への移行をきっかけに、屋外アンテナなどを使って直接受信していた世帯の中に、テレビをあきらめた世帯が少なくないことも指摘されている。
ただ、テレビ台数が減っている一方で、テレビ視聴時間は増えていることも判明した。同調査によれば、米市民による一週当たりのテレビ視聴時間は59時間28分と過去最長記録となった。ちなみに、これまでの最高は09年の58時間29分。10年は58時間25分だった。
また、テレビに視聴方法にも大きな変化が現れていることも分かった。「自分が見たい番組を、見たい時に視聴する」タイムシフト視聴を可能にするDVR(デジタル・ビデオ・レコーダー)の普及がめざましく、12年には全テレビ世帯の41%がDVRを保有するという。また、HD(高精細度)テレビ受像機を持つ世帯も全体の67%に達する見込みだ。
ところで同調査ではネットワークテレビが放送するCMの動向についてのデータも発表したが、10年に放送されたプライムタイム(午後8-11時)番組に出稿されたCM量が前年比9%増かつ過去最高となる13129分に達したことも明らかになった。 <テレビ朝日アメリカ 北清>