「今年こそは3D(3次元)対応テレビの本格的な普及を」と意気込んでいたテレビメーカー各社だが、どうやら期待はずれに終わりそうな気配だ。米家庭用電化製品の販売動向などの調査にあたるサイト「Retrevo(リトリーボ)」の幹部アンドリュー・アイズナー氏は、「昨年は『アバター』(2009年に大ヒットした3D映画)に触発され3Dテレビが躍進する年のはずだったが、何も起こらなかった。そして今年も同じような結果に終わってしまいそうだ。まるで、ぶどうのつるをジーと見守っているのになかなか実らないといった状況だ」と解説している。
家電市場の調査に当たる「Parks Associates(パークス・アソシエーツ)」では「消費者は3D画像視聴に着用しなければならない専用メガネを徹底的に敬遠している」ことを3Dテレビ不振の最大要因に挙げている。そして、専用メガネに続く障害として挙げられているのが「消費者が見たいと思う」3D番組不足だ。
3D番組に最も適しているコンテンツの一つとされているのがスポーツ番組だが、スポーツ専門局として圧倒的な人気を誇るESPNは10年6月に3D専用ネットワークを立ち上げた。現在も放送を続けているが、ほとんど見られていないのが現状。同じく3Dチャンネルをスタートさせたケーブル局HDNet社のオーナーで全米プロバスケット・ボール協会(NBA)に所属するチーム「ダラス・マーベリックス」のオーナーでもあるマーク・キューバン氏は「まったく失敗だった」とさじを投げているという。
全米家電協会(CEA)によれば米国における3Dテレビの販売台数は今年360万台。年初に予測していた400万台を下回る結果となりそうだ。ちなみに、2010年の販売台数は120万台だった。
CEA広報担当のスティーブ・キデラ氏は、HD(高精細度)テレビに比べ3Dテレビの販売価格が100-200㌦上回っていることを指摘、「(3Dテレビの)価格が下がれば消費者の関心を引きつけることが出来る」と語っている。ちなみに、キデラ氏によれば、米市場には700㌦以下の商品も出回り始めていて、12年の3Dテレビ販売台数は700万台に上昇すると予測している。
一方、3Dテレビ不振を尻目に、売れ筋なのがインターネット接続型テレビ。米国では「スマート・テレビ」「コネクテッド・テレビ」などと呼ばれているが、人気動画サイトYouTube(ユーチューブ)やDVDレンタル大手Netflix(ネットフリックス)が始めたインターネット上の番組配信人気が急上昇中で、年末商戦でもスポットライトは3Dテレビよりもスマート・テレビに当てられる(NPDディスプレー・サーチ社)ことになりそうだ。 <テレビ朝日アメリカ 北清>