BBCワールドニュース、米市場に本格参入

BBC24時間ニュース専門チャンネル「BBCワールド・ニュース」はこのほど、米ケーブルテレビ(CATV)事業者最大手コムキャストと再送信契約を締結した。BBCワールド・ニュースはすでに、ニューヨークや首都ワシントンで一部のCATVと契約しているが、視聴可能世帯数は約600万軒に留まっている。コムキャストによれば、2011年中に、フィラデルフィア、シカゴ、ボストン、ミネアポリス、カリフォルニア北部などの同社のサービス・エリアで送信が開始され、来年中には全国の1500万世帯で同チャンネルの視聴が可能となる。CATVや衛星放送の加入世帯数1億軒とされる中で十分な浸透率とはいえないが、BBCでは米市場に本格参入する重要な足がかりになると期待を寄せている。同社ワシントン支局ではすでにスタッフの拡充にあたっているほか、同支局所属のケイティー・ケイ記者(写真・上)が米国向け夜の番組のキャスターを務めることなどが決まっているという。

 

米国内にはすでにFoxニュース・チャンネル(FNC)、MSNBCCNNなどニュース専門チャンネルがあり、ニュース専門局市場は飽和状態に達した感がある。しかし、BBCでは米視聴者の中に、既存の米チャンネルには飽き足らない国際ニュース派が少なくないと判断した模様。同チャンネルのウェブサイトへのアクセス数が増えていることや、同チャンネルが米公共放送(PBS)などに提供している番組の人気が高まっていることなどもサービス拡大決定の好材料となっているようだ。

 

BBCワールド・ニュースは英公共放送BBC傘下でありながら、番組中にCMを挿入し広告収入に依存する民放型チャンネル。CATVなどから受け取る配信料も大事な収入源となり、チャンネル存続のためには大規模な米CATV市場への進出が欠かせないとの判断も背景にあるようだ。

 

BBCの海外ニュース担当部長ピーター・ホロックス氏は米報道機関とのインタビューで、「我々は国際化した視聴者

のための世界的報道機関だ」と述べ、同社の長年に渡る海外報道経験を前面に押し出したうえ、米ライバル局については、「FNCMSNBCは党派色を前面に押し出した編成。CNNは、本格報道かあるいはセンセーションナルな報道を主体にするか迷っているチャンネルだ」との分析を披露。「我々は視聴者に主張を押し付けることは決してしない」と、BBCワールド・ニュースが唯一の中道報道機関であることを強調した。BBCワールド・ニュースは200の国と地域に配信されているが、米国では厳格かつ地味な報道ぶりという捉え方が一般的だ。 

<テレビ朝日アメリカ 北清>