2012年、米広告主が真っ先に選ぶ媒体に引き続き「テレビ」が選ばれた。米メディア・サイトMedia Life(メディア・ライフ)が様々な広告代理店の動向を分析した結果だ。地上波テレビ局の強さは、他媒体がまねの出来ない消費者への到達率。そのため、国土の広い米国で、新製品などを津々浦々に宣伝する際に、テレビ以外の媒体は考えられないとの認識が広告主の間で揺ぎ無いものになっている。加えて昨年9月から始まった新シーズンでデビューした新番組が久方ぶりに粒ぞろい。いまのところ大ヒット番組の登場はないが、及第点以上の番組が多く、他媒体では及ばない数の視聴者を引き付けていることも広告主に好印象を与えている。
そして地上波テレビ局以上に好調さをアピールしそうなのがケーブル局。かつては地上波ネットワークテレビ番組の再放送などが中心だった番組編成が、いまや全米大学体育協会(NCAA)主催の人気競技、大学バスケやアメフトなどの放送を手がけるまでに成長。ケーブル局ファンもニッチな視聴者から一般視聴者に拡大している。4大ネットワークテレビ(ABC、CBS、Fox、NBC)には及ばないが視聴率も上昇カーブを辿っていることも広告主から好感されている。また、CM料金が地上波番組に比べ安価なことも広告が集まりやすい要素になっている。12年の対ケーブル局(約80社)広告費は過去最高額となる220億㌦に達するという見方が出ている。
ちなみに、12年の対地上波テレビ広告費は前年比1%減となる約169億㌦に留まるという見方が出ている。12年は米大統領選挙と夏季五輪の開催年であり、本来なら大きなプラス要素になるはずだが、五輪が時差のあるロンドンで開催されるため広告主が消極的になる可能性が指摘されているためだ。
一方、他媒体を見ると、ますます厳しい見通しなのが新聞。読者離れを背景に、広告収入と購読量の減少傾向に歯止めがかからず、12年はさらに状況が悪くなるとの見方が支配的だ。南カリフォルニア大学の著名なジャーナリズム大学院「Annenberg School for Communications and Journalism」は昨年暮れ、「ニューヨーク・タイムズ紙など主要な新聞、そして一部のコミュニティー向け新聞を除くほとんどの新聞が5年以内に廃刊に追い込まれる」とする極めて悲観的な見通しを示している。12年の新聞広告費は前年に続き8%台の減少となる約250億㌦に留まると見られている。
新聞ほどではないものの、12年の雑誌向け広告費も前年比2.2%減約180億㌦と、不振ぶりを示すことになりそうだ。
そんな中、相変わらず元気なのがインターネット。12年、同媒体への広告費は前年比16%強と群を抜いた増加率を示し、売上高も3oo億㌦強に達するなどとする見方も出ている。また、ラジオも好調さをアピールしそうだ。選挙CMなどのおかげで12年のラジオ広告費は前年度比2.0%強増になる見通しだ。
<テレビ朝日アメリカ 北清>