クライスラーのCMに見る「勤勉の勧め」

Chrysler
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米ナショナル・フットボールリーグの王者決定戦、スーパーボウルが5日行われ、ニューヨーク・ジャイアンツが4年ぶり4度目の優勝を果たしました。スーパーボウルのテレビ中継のハーフタイムに放映されるCMは全米で注目され、スポンサー企業は新作を競って流します。その中で異彩を放ったのが大物俳優、クリント・イーストウッドさんを起用した自動車大手、クライスラーのCMです。
「米国も今、ハーフタイムだ。まだ人々は職にあぶれ苦しんでいる。誰もが、復活するために何をすればいいのかを考えている」
「デトロイトの人々は、少しばかりそれが何かを知っている。彼らはすべてを失った。だが全員が力を合わせた。今、モーターシティーは再び戦っている」
「この国は1発のパンチではノックアウトされない。後半戦がまさに始まろうとしている」
全編にわたり、イーストウッドさんが渋い声で語りかけています。
このCMには続編がありました。

続編はスーパーボウルの翌日、6日付けの「USAトゥデー」に掲載されました。

4ページにわたる別刷り広告が、スーパーボウルの記事がトップを飾る本紙を包み込んで配達されました。

「ビッグゲーム(スーパーボウルというお祭り)は終わった。月曜日の朝が来た。米国民は仕事に行く」

「これまで成しえたいくつかの成果にしがみついていたら、前には進めない」

「現状に満足してはいけないことを、我々は唯一、学んできた」

「我々は後半戦に勝つために、米国全体のために取り組む」

「我々は全員が仕事に戻らなければならない」

こちらもイーストウッドさんの写真が大きく載っています。

クライスラーは20094月に経営破綻しました。

その後、再建が順調に進み、6年前倒しで公的資金を返済しました。

自動車販売台数は大幅な増加を続け、完全復活に向けて進んでいます。

クライスラーのCMは業績を回復している自社をアピールする狙いがあります。

一方で、失業率の改善が続き、株価もリーマン・ショック前の水準まで戻るなど、明るい兆しが出てきた米国全体に「まだまだ気を抜いてはいけない、後半戦を頑張らねばいけないと復活はない」と訴えかけているようです。

 

米国経済の回復が本物かどうか、議論が分かれています。この先のことは誰も分からないというのが、正直なところです。ただ、米国経済が「金融主役」から「物づくり主役」に移行していることは読み取れます。「浮かれずに働こう」と呼び掛けるこのCMのように米国が進めば、米国経済の回復はより確かなものになるでしょう。米国から「勤勉の勧め」を学ぶ日は近いのかもしれません。

 

<ニューヨーク支局 名村晃一>