米メディア企業10-12月期決算①

地上波テレビネットワークやケーブル局、さらには新聞・雑誌などを傘下に置く米メディア企業の20111012月期決算がこのほど相次いで発表された。各社、ヒット作にめぐまれ好調だった映画部門や、ケーブル局の人気が経営を支えている姿が鮮明になっている。ケーブル局については広告収入とともにCATV事業者などから支払われる配信料の増収が寄与している。


ABCネットワークやスポーツ専門ケーブル局ESPN、さらにはディズニー・ランドなどテーマパークを傘下におくウォルト・ディズニーの同期決算は、純利益が前年同期比12.4%増となる146400万㌦。売上高は0.6%増の1077900万㌦だった。 

 

同社の増益にはESPNやディズニー・チャンネルなどを含むケーブル局群とABCネットワークからなる放送部門が大きく貢献した。ABCの広告収入は長年人気のトーク番組だった『オプラ・ウィンフリー・ショー』が終了したことなどが響き減少したが、NFL(米ナショナル・フットボール・リーグ)主催の試合中継番組など人気番組が粒ぞろいのESPNが、ケーブルテレビ(CATV)や衛星放送事業者から支払われる配信料の大幅値上げを勝ち取ったことで、同部門の純利益は前年同期比12%増となる12億㌦を記録した。


テーマパーク部門は、入場料を値上げしたにもかかわらず入場客が増え、グループ全体に大きく貢献した。好調だったテーマパークについては、「不況続きで財布の紐が堅かった米消費者が経済が回復基調にあることを感じ取った証だ」(ニューヨーク・タイムズ紙)などと、好感を持って受け止められている。 

 

一方、映画部門は、ヒット作に恵まれなかったことから売上高は16%減少となる16億㌦に留まった。 

 

若者向け人気ケーブル局MTVやコメディー・セントラル、さらには子供向け専門ニコロデオンなど多数のケーブル局を含む放送部門とパラマウント映画に代表される映画部門などを傘下に置くバイアコム社の同期決算は、純利益が前年同期比65%も減少となる21200万㌦。売上高は3%増となる395000万㌦だった。 

 

大幅な減益は、音楽ビデオ・ゲーム「Rock Band」のメーカー、ハーモニックス社に支払った著作権に関する損害賠償金(37900万㌦)とニコロデオンの視聴率が年末商戦を控えた同期に低迷したことで広告収入が減少したことなどによるもの。ただ、放送部門は、CATVなどからの配信料が二桁台の増収を得たことで、売上高は前年同期比3%増24億㌦となった。さらに映画部門の売上高は、「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」や「パラノーマル・アクティビティ3」などのヒット作にめぐまれ、前年同期比4%増約15億㌦を計上した。 

 

CBSネットワークや屋外広告企業CBS Outdoorなどの親会社CBSコーポレーションの同期売上高は、前年同期比3%減となる378000万㌦。前年(10)同期には人気番組『CSI:科学捜査班』の大型シンジケーション・セールや中間選挙広告収入があったが今期は同様なものがなかったことが響いた。放送部門などの広告収入は同4.4%減少となったが、番組のデジタル配信やCATV事業者から得る配信料の値上げが功を奏して同期純利益は前年同期比31%増となる37000万㌦を記録した。

<テレビ朝日アメリカ 北清