世界的なメディア・コングロマリット、ニューズ・コーポレーション傘下のニュース専門ケーブル局「Foxニュース・チャンネル」(以下、FNC)が10年連続視聴率ナンバーワンという金字塔を打ち立てた。米国におけるニュース専門局は、3大局とされるFNC、MSNBC(NBCユニバーサル系)、CNNの間で熾烈な視聴者争奪戦が繰り広げられているが、15年前に設立されたばかりのFNCが独走態勢を固めた感がある。
2011年通年のプライムタイム(午後8-11時)の平均視聴者数をみるとFNCが186万人で断トツ。これにMSNBCの77万5000人、CNN68万9000人と続いた。同年の全日平均視聴者数もFNCが107万人でトップ。CNNが47万9000人、MSNBCは43万4000人だった。米大統領選予備選が始まった今年1月のプライムタイム平均視聴者数を見ると、FNCが186万人と好調を維持。CNNの87万5000人、MSNBCの81万7000人に大きく水をあけている。
FNCといえば、「保守派報道」というレッテルが貼られているが、ニューヨークのフォーダム大学のメディア・コミュニケーション学部のポール・レヴィンソン教授はニューヨーク・ディリーニュース紙に、「同社の保守的姿勢ばかりが取り沙汰され、確立された総合的ニュース・チャンネルであることが見逃されがちだ。10年間獲得視聴者数トップは、画期的な業績だ」と高い評価を下している。
一方、FNCのメイン・キャスター、シェパード・スミス氏は、王座を守って行かなければならないプレッシャーについて、「これまで通り、社が貫いてきた(編成)方針を忠実に守って報道していけば、トップの座を守っていくことができるのではないか」と胸を張っている。
ところで、今年は米大統領選挙の年。米世論調査会社「ピュー・リサーチ・センター」がこのほど発表した調査結果によると、「選挙に関するニュースはケーブル局から入手する」と答えた人が「ローカル局やネットワークテレビから」と答えた人の数を上回ったことが明らかになった。同調査によると、ケーブル局を挙げた人が全体の36%とローカル局32%、ネットワークテレビ番組26%に差をつけている。
FNCやCNNにとって吉報となりそうだが、米民放テレビ局やネットワークテレビを代表する全米放送事業者(NAB)がこの結果に噛み付いた。NABによれば、ローカル局の32%とネットワークテレビ26%を合わせれば58%。つまり全体でみれば、地上波局がケーブル局36%を大きく引き離していることを示していて、ピューによる“分析結果の不可解な読み取り方“を槍玉に挙げている。
<テレビ朝日アメリカ 北清>