米映画界最大のイベント、第84回アカデミー賞の発表と授賞式が2月26日、ロサンゼルスで開催された。授賞式の模様は今年もABCネットワークが午後8時半(米東部時間)から3時間にわたり、全国向けに独占放送した。同中継番組はNFL(米プロ・フットボール協会)の王者決定戦スーパーボウルに次ぐ視聴者数を誇る番組。今年は平均視聴者数3930万人を獲得、不調だった昨年の3790万人を3.7%上回り関係者はひとまず胸をなでおろしている。ちなみに、広告主が重視する18-49歳層の視聴率は昨年と横並びの11.7%だった。
しかし、2週間先行して開催されたグラミー賞(米音楽界最高の栄誉)の中継番組が獲得した平均視聴者数4000万人にわずかながらも及ばず、業界ではアカデミー賞人気が頭打ちになったとの見方も出ている。今年のアカデミー賞候補には、フランスのサイレント映画(モノクロ)『アーティスト』や英国の元首相マーガレット・サッチャー氏を描いた『マーガレット・サッチャー:鉄の女の涙』など地味な作品がノミネートされたことや、裏番組にNBA(米プロバスケットボール協会)主催のオールスター戦があったことも授賞式への関心がイマイチ盛り上がらなかった要因の一つとして指摘されている。
一方、2月11日に急死した米エンターテイメント界の歌姫ウィットニー・ヒューストンさんのあたかも追悼記念番組となったグラミー賞(12日)がより多くの若者層をひきつけたことで、アカデミーの弱さが浮き彫りになったともいえそうだ。
アカデミー賞、ここ数年の視聴者数を見ると、98年の5730万人をピークに05年までは、最低4000万人レベルを保ってきた。ただ、06年以降は4000万人を割るようになり、過去5年間で視聴率は15%も下降している。こんな傾向に米エンターテイメント界では、「アカデミー賞はもはや時代遅れのものになったかもしれない」と悲観的な声が挙がっている。
しかし、ABCネットワーク関係者は、今回の授賞式をめぐって簡易ブログ「ツイッター」やソーシャル・ネットワーキング・サービス「フェイスブック」などいわゆるソーシャル・メディアに寄せられたコメントが380万件にも上ったことや、インターネット上のアカデミー関連動画視聴数が飛躍的に増えていることなどを挙げ、同中継番組の斜陽化を否定している。米調査会社キャンター・メディアによれば、今年のアカデミー賞授賞式中継番組の30秒CMは昨年比約13%増となる170万㌦が課されたが完売した模様で、広告主の間でもアカデミーの魅力はまだまだ健在のようだ。
ところで、アカデミー賞の最高の栄誉、作品賞には『アーティスト』が、主演男優賞には同映画に主演したジャン・デュジャルダンさん。主演女優賞には『マーガレット・サッチャー』のメリル・ストリープさんが助演女優賞を含め3度目の受賞に輝いた。短編ドキュメンタリー部門にノミネートされた東日本大震災の被災地を記録した米映画『津波そして桜』は受賞を逃した。
<テレビ朝日アメリカ 北清>