番組再送信に新サービス誕生

米国でPay TV(ペイテレビ)などと総称されているケーブルテレビ(CATV)や衛星放送事業者が提供する番組再送信サービスに対抗する新たなサービスが今年3月中旬にスタートすることになった。新サービスを提供する会社はAereo(エーリオ)と呼ばれ、ネットワークテレビ系列のローカル局をブロードバンド(高速大容量)通信上で配信するほか、ネット上のサーバーに自分の好きな番組を録画、好きな時に視聴できるDVR(デジタル・ビデオ・レコーダー)機能も提供する。月額加入料を安価な12㌦に設定し、ペイテレビに不満を持つ顧客を引き付けたい考えだ。同サービスに加入すれば、パソコンはもとより、インターネット接続機能が備わったテレビ、タブレット型端末、スマートフォン(多機能携帯電話)などでも番組視聴が可能となる。

 

 

当面、サービスエリアはニューヨーク市に限定される。同新事業にFoxネットワークの創設に関わった米メディア界の大物バリー・ディラー氏が全面的に肩入れしていることもあり、業界から大きな関心が寄せられている。


米国では約9割のテレビ視聴者がなんらかのペイテレビに加入してテレビを見ている。ペイテレビ各社は地上波テレビ局はもとより、ペイテレビに加入しなければ見られないCNN、ディスカバリー・チャンネル、MTVなどいわゆるケーブル局を数百チャンネルにわたって配信・再送信しているのが現状だ。テレビ好きの米国のほとんどがペイテレビに加入しているが、年々値上がりする加入料に不満が募っている。社によってまちまちだが、ローカル局と通常のケーブル局を合わせたベーシック・パッケージで月額最低約30㌦というのが相場だ。加入者からは、「ベーシック・パッケージは見たくもないチャンネルが満載。チャンネル数を限定し加入料を安くしてほしい」などといった苦情が常に聞こえてくる。エーリオ社ではこんな不満をもつペイテレビ加入者に目をつけた。


エーリオ社のサービスにはケーブル局の配信は含まれないが、同社の創設者で最高経営責任者(CEO)でもあるチェット・カノジャ氏は、「エーリオにネットフリックスやフールーなどを合わせればペイテレビ加入時に匹敵するようなテレビ番組を見ることができる」と強調している。ちなみに、ネットフリークスはテレビ番組や映画のDVD宅配及びネット配信会社。フールーは、ネットワークやケーブル局番組をネット上にオンデマンドで配信する会社。無料あるいは月額加入料7.99㌦で提供されている。


しかし、エーリオの行方に首をかしげる向きもある。4大ネットワーク(ABCCBSFoxNBC)やローカル局などから再送信許可を受けていないからだ。著作権侵害に当たる可能性もあり、すでにネットワーク系列局などが法的な措置を辞さない構えを見せている。これに対しエーリオ側は、「加入者一人一人に専用のアンテナ(10㌣硬貨大)をニューヨーク市内のビル屋上に設置する。我々は基本的にはアンテナとDVRの使用料を利用者に課すだけで、著作権侵害には当たらない」(カノジャ氏)と主張している。 

<テレビ朝日アメリカ 北清