若者層のブラウン管離れが加速

米国では長年に渡りテレビ視聴が娯楽ナンバーワンにランクされている。25日に開催されたNFL(米ナショナル・フットボール・リーグ)の王者決定戦スーパーボウルに米テレビ史上最高記録となる11130万人がチャンネルを合わせたばかりだが、市民がテレビ視聴に費やす時間は一日当たり平均4時間39分に上っている。しかし、そのテレビ視聴習慣にある変化が起きていて、メディア関係者からの関心を誘っている。


米国でテレビ視聴率やメディアとの接触習慣などの調査にあたっているニールセン社がこのほど発表したレポート「The Cross-Platform Report」(201179月期版)によれば、35歳以上のテレビ視聴時間はますます増大傾向にあるものの、1234歳では逆に減少傾向にあることが判明した。 

 

若者層によるテレビ離れはこれまでに何度も指摘されている。しかし、今回の調査では34歳以下の若者層のテレビ視聴時間が前年同期比一日当たり9分ほど減っていることが判明。さらに、その減少傾向が3期連続で続いていることが分かり、テレビ関係者の間では危機感を募らせている向きもあるようだ。ニューヨークの広告代理店「TargetCast TCM」はニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューの中で、「同レポートをしっかり受け止める必要がある。同傾向が持続するようであれば、既存メディア(テレビ)に投入してきた何十億㌦もの広告費を他媒体に振り分ける必要に迫られることになるだろう」と、語っている。 

 

しかし、テレビ視聴時間が減ったからと言って若者がテレビ番組に背を向けたわけではないことも分かった。彼らは「ブラウン管を見なくなった」のであって、パソコンやスマートフォン(多機能携帯電話)さらにはビデオゲーム機を利用したテレビ番組視聴が定着しつつあることが浮き彫りになったのだ。インターネット上の番組配信が普及したおかげだが、若者たちのメディア接触方法に大きな変化が起きている証拠だ。


別の広告会社「Carat USA」のリサーチ部門担当者のビリー・ゴールド氏は、「引き続き(広告主にとって)若者層全般に到達する最良の媒体がテレビであることに変わりない。しかし、同層のメディアとの接触方法に大きな変化が出ていることに最大の注意を払う必要がある。当社ではすでに、テレビ媒体に加え、オンラインビデオなどインターネット媒体を積極的に取り入れた包括的な広告方法を導入し始めている」と説明している。


ちなみに、今年のスーパーボウルの模様は、初めてインターネット上でサイマル中継されたが、利用者は210万人を記録。“ブラウン管視聴者数には遠く及ばなかったものの、NBCネットワークによれば、ネット上で放送されたスポーツ中継番組としては最高記録を樹立した。  

<テレビ朝日アメリカ 北清