人気番付を揺るがすDVR視聴

米テレビ人気ナンバーワン番組といえば、Foxネットワークのオーディション番組『アメリカン・アイドル』。今年でシーズン11年目に突入、ひところの勢いはないものの他番組の追随を許さず、広告主が重視する1849歳層視聴者数では7年連続でトップ、総世帯視聴者数も5年連続でトップの座についている。

 

しかし、「実は我こそ米国でもっとも見られている番組なり」という番組が現れた。ABCネットワークが放つ人気コメディー番組『モダン・ファミリー』がそれ。同番組の放送時における1849歳層の平均視聴者数は710万人ほどだが、ハードディスク内蔵型デジタル・ビデオ・レコーダー(DVR)などを利用した放送後7日間にわたる視聴者数を加味すると、総視聴者数は1020万人に達し、アメリカン・アイドルを超えることが明らかになった。ニールセン社が発表した。

現行シーズン(2011-12年シーズン)は5月下旬に終了するが、放送後7日間のDVR視聴を合わせれば、モダン・ファミリーの1849歳層総視聴者数がアメリカン・アイドルのものを上回ることはほぼ間違いない情勢だ。ちなみに、総世帯視聴者数のカテゴリーでもDVR視聴を合わせればCBSネットワークの人気ドラマ『NCIS:ネイビー犯罪捜査班』がアメリカン・アイドルを上回ることになるという。

 

しかし、ABCCBS関係者にとって課題は、こうした結果が番組の広告収入に響かないことだ。現在、ネットワークと広告主の間では番組の視聴率は放送日に加え放送後3日間のDVR視聴者数を合わせて評価し、広告料金を設定することになっている。ネットワーク・サイドは、7日間分も取り入れるべきだと考えているが、広告主からの抵抗にあっている。特に週末のビジネスや販売を念頭にCMを流している映画会社や自動車販売店などのスポンサーが、「放送後7日後にCMを見てもらっても意味がない」などと主張しているからだ。

 

これに対し、ABCのマーケットリサーチ部門責任者チャールズ・ケネディー氏は、「いまだに放送時の視聴率が編成方針やマーケット戦略などを決める際の基準に定められていることは承知している」としながらも、(これほどの)DVR視聴者を何らかの方法で取り入れていかなければならない」とアピールしている。米国内のDVR普及率は現在43%ほどだが、今後ますます所有者が増えて行くものと見られている。 

<テレビ朝日アメリカ 北清>