億万長者がネット・テレビ開設へ

米経済誌『フォーブス』の世界長者番付で3年連続首位となっているメキシコの通信・メディア王、カルロス・スリム氏がこのほど、インターネット上のテレビネットワーク『Ora.tv(オラTV)』の立ち上げ構想を発表した。米国や中南米をはじめ世界各地に配信したい考えで、本年中のサービス開始を目指している。オンデマンド形式なる模様だが、編成内容はニュースとエンターテイメントを主体にする。まず手始めに元CNNトーク番組ホスト、ラリー・キング氏の起用を発表し、注目を集めている。

 

オラTVはスリム氏が100%出資するが、実際の運営に当たるCEO(最高経営責任者)には世界的なメディア企業ニューズ・コーポレーションでデジタル報道部門の責任者だったジョン・ハウズマン氏が抜擢された。ハウズマン氏によれば、オラTVは有料加入型ではなく、広告収入で運営を支える無料サービスになるという。ラリー・キング氏をはじめ、すでに複数の番組供給者と話し合いが始まっている模様だ。


ラリー・キング氏(78)が担当する番組は、同氏が1985年から2010年にわたりCNNで担当したプライムタイム番組「ラリー・キング・ライブ」に似たフォーマットを採用することになりそうだ。ラリー・キング・ライブは、かつて圧倒的な人気を誇るトーク番組王として一斉を風靡したが、晩年は視聴率低下傾向が続き10年暮れに降板した。

 

キング氏はニューヨーク・タイムズ氏とのインタビューの中で、「番組降板後、大きなニュースがあるたびに、そわそわしていた。いろいろな人に番組がなくなってさびしいと声をかけられるが、自分もさびしい気持ちでいっぱいだ」と述べ、新天地に意欲を示している。キング氏は、他番組の編成にもパートナーとして参加するという。

 

スリム氏は、かねてからインターネットをプラットフォームとしたテレビ番組の配信サービスに強い興味を持ち続けてきたが、発表文の中で、「デジタル・テレビ(ネット上の番組配信)は飛躍的な成長を遂げることになる。中でも業界でも抜きん出たタレントを結集するオラTVが突出したサービスになるだろう」と強調している。メキシコやブラジルでは、14の割合でテレビ視聴時間よりもネット利用時間のほうが多いというデータ(米調査会社フォレスタ)もスリム氏を勇気付けるものになっている。 

<テレビ朝日アメリカ 北清>