米新聞各社の間で動画配信に積極的に取り組む姿勢が鮮明になっている。米経済紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙やニューヨーク・タイムズ(NYT)紙など、米国を代表する有力紙が前向きに展開しているのが印象的だ。
まず、WSJ紙だが、月曜日から金曜日まで連日インターネット生放送をしている。午前8時半(米東部時間)に始まる『New Hub』から午後5時の『Opinion Journal』まで7番組、計約4時間の番組が編成されている。各番組では経済ニュースはもとより、政治やテクノロジー・ニュースなど幅広いテーマが取り上げられる。海外ニュースの映像などは、AP通信など通信社のものを使っているが、レポートやコメントなどはすべて自前の記者が担当することになっていて、WSJ編集部の一角にはインタビュー・コーナーが設置されている。「WSJで働く記者2000人総動員体制で伝える」としている。それぞれの番組は、放送後もいつでも視聴できるオン・デマンド形式でも提供されている。
NYTも電子版ホームページ上に「ビデオ」と名づけられたタグが設置されているが、2月から毎日朝更新される『Business Day Live』のコーナーが始まった。経済ニュース中心に同紙の記者が数名の専門家などにインタビューなどをしている。同紙のネット放送コーナー『TimesCast』では、このBusiness Day Liveに加え、アフガニスタン情勢など、世界情報なども伝えている。ワシントン・ポスト紙やロサンゼルス・タイムズ紙など他有力紙も近日中に同様なビデオ・コーナーを設置する予定だ。
読者離れや広告収入の減少で、厳しい経営を迫られている米新聞各社は、電子版の有料化などデジタル収入に力を入れ始めている。インターネット広告の中でもテレビCM型の動画広告は昨年の22億㌦規模から今年は30億㌦規模と、急成長を示す魅力的な収入源。デジタル戦略に重きを置き始めた新聞各紙にとってビデオ・サイトは避けては通れない道ともいえそうだ。
さて、業界の一部では、「このままいけばCNNやCNBCなどニュース専門局の脅威になるのでは」などという声も聞こえるが、WSJ.comのエクゼクティブ・エディターを務めるアラン・マレー氏は、「ケーブル局を目指しているわけではない。情報はどんな媒体でもいかなるプラットフォームでも入手したいと考えるデジタル時代の読者の嗜好に応えたものだ」と語っている。
<テレビ朝日アメリカ 北清>